品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001が2015年9月20日に改訂される。
今回の改訂において、日本から提案されたものとして、
◇組織の固有技術
◇ヒューマンエラーの管理
があるといわれている。
具体的に、ISO9001の要求事項のどこに入ったかというと、
◆7.1.6組織の知識
◆8.5.1製造及びサービス提供の管理
である。
前者について引用すると、
「組織は,プロセスの運用に必要な知識,並びに製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識を明確にしなければならない。
この知識を維持し,必要な範囲で利用できる状態にしなければならない。
変化するニーズ及び傾向に取り組む場合,組織は,現在の知識を考慮し,必要な追加の知識及び要求される更新情報を得る方法又はそれらにアクセスする方法を決定しなければならない。」
後者について引用すると、
「8.5.1 g)ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。」
と規定されている。
つまり、「組織の知識」に関しては、
「ちゃんとした仕事、ちゃんとした製品およびサービスを提供するにあたって組織が必要とする固有な技術を明確にして管理してくださいね」
という意味になるだろう。
要は「〇〇さんがいた時代は、きちんとできていたが今はできていない」といった特定の個人が知識や固有技術を保有して管理していたような事例は、組織には、多々あると思うが、それを「組織の知識や技術として管理してください」ということである。
規格の注記では、事例が下記のように示されている
◇内部の知識源
例:知的財産、経験から得た知識、失敗から学んだ教訓及び成功プロジェクト、文書化していない知識及び経験の取得及び共有、プロセス、製品及びサービスにおける改善の結果
◇外部の知識源
例:標準、学界、会議、顧客又は外部の提供者からの知識収集
一方、「ヒューマンエラーの管理」については、
「組織における多くのミスやトラブルは、ヒューマンエラーに原因があるから、それを再発防止するのは当然であり、また、予防処置も講じてくださいね」
というような意味であろう。
ただ、この「ヒューマンエラー」については、規定されている箇所が「8.5.1製造及びサービス提供の管理」の中なので、ヒューマンエラーの管理対象は、組織の仕事全般というより、「製造及びサービス提供に関わるヒューマンエラー」という感じで、やや限定されたものである。
また、「組織におけるミスやトラブル」について、「ヒューマンエラー」が関わってくるケースとして「過失」と「故意」があるが、規格での管理対象は、あくまでも「過失部分の管理」であり、「意図したミスやトラブル」・・・要は、「悪意を持って犯した組織不祥事」については、直接的には要求事項として入っていない。
もちろん、「悪意を持ったヒューマンエラー」の原因は、「プロセスの運用に関する環境(7.1.4)」に関する不満であったりすることが多々あるから、これらを管理することは、結果としては、「悪意をもったヒューマンエラーの管理」になっているとは思う。
ただ、こうして、「規格としては新規概念」ともいえる「組織の知識」と「ヒューマンエラーの管理」であるが、よくよく考えると、組織が管理すべきこととしては当たり前のことであり、ISO9001の2015年版改訂は、「本来、組織が管理すべき概念として足りない部分を補った改訂」ともいえるのかもしれない。
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