組織が仕事を管理する上での規範となる国際規格のひとつである「品質マネジメントシステム-基本及び用語」(ISO 9000:2015)では、「設計・開発」について、
「対象に対する要求事項を、その対象に対するより詳細な要求事項に変換する一連のプロセス」
と規定されている。
以前(現時点では現行規格)の規格では、「設計・開発」の定義は、
「要求事項を、製品、プロセス又はシステムの、規定された特性又は仕様書に変換する一連のプロセス」
と規定されていました。
「以前とあんまり変わっていないじゃないか」
とおっしゃる方も多いと思いますが、「設計・開発」の定義を見る限り、顧客に「製品及びサービス」を提供する上での「設計・開発」には、提供する製品やサービスそのもの自体だけでなく、製品やサービスをそのものの仕様が明確であっても、それらを「作りこむ」上で十分に方法論が確立していない場合は、「設計・開発プロセス」を確立してくださいね、という意味になるでしょう。
事例で考えてみれば、わかりやすいが、例えば、今話題の「新国立競技場」。
2500億円以上建設コストがかかるといわれ、見直しが決まった「ザハ案」であるが、仮に、「建物そのものの設計」が決まっていたとしても、ザハ案の特徴的な建物の構造として「キールアーチ」があった。
このキールアーチは、橋梁施工の技術が必要とされ、建設の世界では「建築学とうより土木工学の技術を活用しないと施工できない」といわれていた。
つまり、新国立競技場は、建物(製品)自体の設計が、仮に、完了していたとしても、建物を具体的に建造する上での工法に関しては、「より詳細な要求事項に変換する一連のプロセス」が、必要になってくるわけである。
要は、この部分(プロセス)も「設計・開発ですよ」ということになるのだ。
「新国立競技場」の例だと「そりゃ、実際に建てる上で、確立すべき工法やその施工をするにあたって、特注の設備や機械・工具がなければ施工できない、ということであれば、それを確立させるプロセスも「設計・開発」になる、というイメージはつかみやすい。
しかし、同じように、例えば、輸送業の場合、「特殊な輸送物」(巨大であるとか、重量が極端に重いとか、精密、繊細であるとか)を運ぶ場合、輸送経路や養生の方法など、「より詳細な要求事項に変換する一連のプロセス」が生じる。
けれども、多くの輸送業の場合、このような「プロセス」を「設計・開発」と位置付けず、「当組織には、設計・開発プロセスは存在しません」と主張する組織が多かった。
こういった組織は、2015年版の規格改訂の意図のひとつが、
「組織の適合製品・サービスを提供する能力に関する信頼感を増大させること」
であるから、2015年版における認証審査では、「設計・開発」として、組織が適用していなかったならば、バシバシ指摘が出るであろう。
組織の品質マニュアルに設計・開発として定義されているいないは、あまり重要ではなく、基本的に、「設計・開発に相当するプロセスが存在しない組織事例は、ほぼ100%、あり得ない」(あり得るとすれば、技術が確立したもののみの仕事か、相当単純な作業しかやらないような組織)という前提で、組織はマネジメントシステムを構築して、認証機関をはじめとした外部に説明していくことが求められるのである。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ449号より)
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