注)以下のコラムは、2015年8月14日配信のメルマガからの引用です。
マネジメントシステムの国際規格ISO9001は9月15日付で改訂されています。
組織に対する品質マネジメントシステム規格(ISO9001)が2015年9月に改訂されることは何度も話題にしていますが、「リーダーシップ」に対する要求が強化されたことも、規格を適用させる組織やその組織を審査する認証機関にとって大きなポイントのひとつであろう。
例えば、今回の改訂では、
◇事業プロセスと品質マネジメントシステム(QMS)の統合
◇QMSの有効性への説明責任
という部分も大きな変更である。
月並みであるが、この変更により、経営トップは、
◆QMSを事業にどのように役立てようとしているか
◆QMSが有効かどうか
については説明が、自らの言葉でできるようにしておかなければならない。
実際、組織を審査するとなると、品質マネジメントシステムを活用し、認証されることで対外的な信用力向上と組織内部のマネジメントシステムの見直しを目的に取り組んでいる組織の経営者であれば、経営トップ(社長)自らが、認証機関の質問にきちんと回答しているケースが多いから、上記の2点について、それなりの回答がなされると思う。
問題は、例えば、
◇認証は発注者の要求だからやっているだけで、所詮、規格は建前論である
◇マネジメントシステム構築は事務局まかせで、実態の事業とは別の観点で管理している
◇実質的な経営トップは別にいて、組織の都合上、対外的には経営トップを表明している
といったケースの組織にとっては、「トップの説明責任が強化されている」という点は、相当苦労すると思う。
私の過去の経験では、
「社長が全く審査の場に出てこない」
「社長が審査の場に出てきても、挨拶以外、ほとんど会話しない」
「QMSは発注者や顧客の要求として取り組んでいるだけである、と言い切るトップ」
「経営トップが、事務局が事前に用意した品質方針に対する想いなどを読み上げて、その他の質問には、ほとんど回答がない」
といったケースは、何度かあった。
こうしたケースを目の当たりにした場合、
「経営トップは説明責任を果たしていないから規格に対して適合していませんね」
と認証機関の審査員は指摘できるだろうか?
おそらく、組織の経営トップに向かって、
「あなたが問題です」
ということはできないだろう。
「指摘ができない理由」は、認証機関は、組織から選ばれて審査サービスを遂行しているから、である。
「うちの認証機関は経営者に対してダメ出しを出すから別の認証機関に変更する」
といわれれば、顧客を1社でも失いたくない認証機関にとって、「ダメなものはダメです」とピシャッと指摘しきれるか?という点においては、微妙だと思う。
また、仮に
「経営トップからQMSの事業への利用方法と有効か否かの説明がなされなかった」
という指摘を認証機関がした場合、組織は、どのような是正処置を講じれば、「是正処置内容は妥当である」と判断してよいのか?についても、議論の余地がたくさんあるだろう。
このあたりに関しては、「スジ論」で正攻法に考えるなら、
「認証制度の信頼性を高めるために、ダメなものはダメときちんと言い放っていきましょう」
という決意が認証機関全体にあれば、認証機関は、
「どうぞ、他の認証機関に審査を変更してもらってもいいですよ、でも、他の機関でも、今のような経営トップの認識と対応では、規格に適合しているという評価は得られませんよ」
と真摯な態度を取ることができる。
しかし、実際に「うちは、経営トップがちゃんと回答できなくても、審査の席に出てこなくても大丈夫ですよ」と抜け駆けする認証機関が存在するならば、規格改訂によって経営トップの説明責任が強化された点は「絵に描いた餅」となるだろう。
認証制度の信頼性は、認証に関係する機関全体で守り、さらに向上させていく、という強い想いがなければ、信頼性アップは図れないだろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ450号より)
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