企業のマネジメントシステム組織体制を拝見していると、「社員、職員、スタッフ」といわれるような人には様々な形態がある。


社員、準社員、契約社員、アルバイト、パートといった類は、雇用方式の違いだ。

また、労働者派遣法に基づく、派遣労働者も、マネジメントシステム上は、社員と同じように取り扱ってOKだ。


厄介なのは、俗に言う「構内下請け」の業者さんだ。

工業製品の製造業なら、塗装工程、食肉系の食品製造工場なら肉の解体や脱骨といった原料処理工程を担当している「協力会社」さんが工場内の一部のプロセス(一部の工程)に存在する。


その塗装や原料処理といった工程が、「工場の外」にある場合は、通常の「外注工程」として、物理的にも理解できる。

要は、独立した工程であり、「仕事の完成」が目的である「業務請負」と、誰でも認識できる。


しかし、「工場内の一工程」として存在する場合、実質的には、業務指示は、その工場の会社の社員から出ていることも多いし、そうでなければ、「構内の外注業者」である意味も、その製品を作るという生産管理等の観点からもやりづらいであろう。


要は、「ある製品をしっかりマネジメントして要求事項を満たしたものを作りこみ市場に出荷する」という仕事の仕組み(マネジメントシステム)としては、立場が、社員やアルバイトパート、派遣労働者であろうが、構内外注業者の作業者であろうが、実務的には、区分けなく「当該業務に必要な力量基準を決めて、品質方針や品質目標」といったことを管理する方が、品質的にも製品安全的にも「会社が目指すいいものづくり」ができるだろう。


しかし、前述したように「構内下請け」さんは、「下請法」的には、「業務請負」となり、その工場の社員は、構内下請け業者の作業者に直接指示ができない。

つまり、業務指示をするのであれば、構内下請け業者の責任者に指示して、その責任者の管理下での業務指示(製造方法や納期、方針や目標管理、業務に必要な力量評価、教育訓練など)をしなければ、法律違反となってしまう。


整理すると(昭和6171日の労働省告示第37条より)、「業務請負」とは、以下の「A、B、C」のすべてのケースに該当しなければならない。


「A」

◇(請負企業が)労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行う

◇(請負企業が)、労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示を自ら行う

→仕事の段取りやその出来不出来を判断するのも請負企業である

→委託元の企業は、仕事のやり方を請負企業の従業員に全面的に任せることになる

→委託元は、「何日までにやりなさい」といった工程管理は行えない


「B」

◇(請負企業が)、労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理を自ら行う

◇(請負企業が)、労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理を自ら行う

→作業者が仕事を始める時間や終わりの時間、休みなどは、請負企業側がコントロールする


「C」

◇(請負企業が)、作業者の服務上の規律に関する事項について、指示その他管理を自ら行う

◇(請負企業が)、作業者の配置等の決定及び変更を自ら行う

→作業者の業務分担を決めるのも請負企業

→きちんと仕事をしているか否かを把握し、監督するのも請負企業

→委託元は、「誰々さんにこの仕事を担当させるように」といった指示はできない


つまり、構内外注業者さんは、マネジメントシステム的には、委託元である工場のトップマネジメント(社長や工場長など)の管理下で業務を管理することが適当であると考えられるのですが、下請法の観点で考えれば、工場のトップマネジメントの管理が直接及ぶのは、構内外注(業務請負企業)の責任者までで、そこから先の管理は、委託元の工場側は、請負企業の責任者を通じてしか管理できない、ということに注意しなければなりません。


個人的には、構内外注業者さんは、マネジメントシステム上は、「当該マネジメントシステム内の要員」と考えた方が業務上は適切だと考えますが、第三者監査を受ける場合は「マネジメントシステムに含まれる要員数が増えると監査費用が高くなる」ことと「下請法の適用」の観点があるので「注意を要する」ということになります。


話は少しそれますが、公正取引委員会の「よくある質問(下請法)」に、

(以下引用)

「親子会社間などの取引であっても下請法の適用が除外されるものではありませんが,親会社と当該親会社が総株主の議決権の50%超を所有する子会社との取引や,同一の親会社がいずれも総株主の議決権の50%超を所有している子会社間の取引など,実質的に同一会社内での取引とみられる場合は,従前から,運用上問題としておりません」

(引用ここまで)

という記述がある。


私の理解が間違っていなければ、いわゆる経理上の都合等で法人格を分けている場合の「法人格の違いによる見かけ上の構内外注」である場合は、「下請法」は適用されないようだ。

したがって、このような場合は「構内外注」であっても、委託元社員が構内外注作業者に直接業務指示をできることになる。

つまり、もともとは、同じ会社の社員であったが、現場実務職を別会社(子会社)所属にするような雇用形式の場合は、「今まで通りでいいよ」ということらしい。


話を元に戻すと、「マネジメントシステム上はこうあるべき、こうある方が理想的」というケースでも「法律的には注意が必要」というケースもあるので、それを認識してシステム構築しなければ、コンプライアンス的には、ヤバくなるので気をつけたいものです。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ439号より)


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