マネジメントシステム監査の世界では「逐条審査からの脱却」というのが、ここ数年のトレンドである。
もう、このこの手の議論は、「聞き飽きている」、あるいは、「もう議論をしつくして自分の中での結論が出ている」場合は、少々、退屈で、いまさら感のある話ではあるかもしれないが、あらためて考えてみたい。
確認の意味で「逐条審査」について、振り返ると、
「ただ単純に,規格や基準の条項ごとに,要求事項を満たしているかを判定する審査」
が逐条審査と呼ばれるものである。
マネジメントシステム監査を通じた「認証審査」の世界では、いわずもがなであるが「適合性審査」の実施が求められる。
適合性審査とは、
1)規格や基準に適合しているか
2)規格や基準の条項をすべて満たし,マネジメントシステムが有効に機能しているか
といった点を満足しているかどうかを確認する審査を指す。
ちなみに、経済産業省のガイドラインでは、「有効性審査」について、
「規格適合性だけでなく,規格がシステムとして有効に機能しているかどうかを,パフォーマンスが向上しているかどうかで判断する審査のこと」
と定義している。
つまり、単純に示せば、
「適合性審査=逐条審査+有効性審査」
であるのだ。
上記で述べた概念について、一般的には、わかりにくいので、たとえ話で考えてみたい。
例えば、法律で定められた自動車検査登録制度(車検)。
自家用車の場合、原則的には、初回登録以降は、2年毎、検査を受ける。
この場合、検査項目毎、チェックしていくのが、マネジメントシステム審査でいう「逐条審査」にあたると思う。
現在の車検制度の場合は、「逐条審査」が問題なければ、「車検合格」で検査証は更新される。
しかし、自動車に乗るユーザーサイドの立場で考えれば、例えば、
「車検には合格したけれど、期待する燃費で走れていない」
「車検には合格したけど、しょっちゅう故障が生じる」
といったケースもあり、この点について、チェック(検査)して欲しいというニーズや期待もあると思う。
マネジメントシステム審査の世界でいえば、この
「期待された結果が生み出されていない(期待された結果が生み出されているか否か)」
に着目して審査を行うことを「有効性審査」と呼んでいるわけである。
マネジメントシステムの有効性の評価については、「プロセスアプローチ」を通じた審査が推奨されています。
プロセスアプローチの審査とは、簡単に言えば、
「業務の流れに即して行う審査」
です。
もうちょっと具体的にすると、製造業でいえば、
「市場調査、宣伝、受注、設計、購買、製造やサービスの提供、クレームの発生から処理、マネジメントレビューから改善活動といった各プロセスの流れを一連のシステムとして捉え、各プロセスの経営資源や場合によってはリスクなど、さまざまな要因から「アプローチ」して、適合性をチェックするわけです。
多くの会社の内部監査や経験の浅い第三者審査機関の審査員は、とかく「逐条審査」のみの審査となり、表面的な指摘、つまり「規定された記録が作成されていない」「手順書間に不整合がある」といった表面的な「ルールと活動の整合性」が中心になります。
しかし、規格等に対して適合していても、システムとして有効に機能していに場合は、やはり「マネジメントシステム」として、どこかに問題があり、機能していないわけです。
例えば、ルールが時代にそぐわないものであれば、適切でないルールでの業務の運用がちゃんと実施されていても、期待される結果などアウトプットされるわけがありません。
ただ、「有効性の審査の重要性」が、あまりにも強くなりすぎると、「適合性の審査」という観点では、規格等のチェック漏れが生じる可能性もあります。
また、規格等の知識や理解に浅い場合は、「逐条審査をすることで規格に対しての理解が深まる」というメリットももちろんあります。
マネジメントシステム審査において「逐条審査=必要悪な審査手法」では決してないことは、念のため申し添えておきます。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ446号より)
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