国際的な経営管理システム規格のひとつである「品質マネジメントシステム規格(ISO9001)」が2015年9月に大幅に改訂される。
前回の規格改訂は2008年ではあるが、この改訂は「2000年版改訂規格の意図の明確化による誤用の防止」が主目的であり、実質的には、2000年の改訂から15年ぶりの改訂である。
今回の2015年版発行に伴う変更は、この規格を適用する組織(企業)にとっても、規格を適用してマネジメントシステムを構築した組織を認証する機関(認証機関)や認証する機関を認定する機関(認定機関)にとっても様々な対応を図る必要があり、「すごく大きな変更」である。
細かく対応すべき点は多々あるが、認証機関や認定機関が「認証制度としての対応」としてやるべきことを主に4つ挙げると、
◆事業とQMSとの関わり
(※「事業」とは組織の存在目的の中核となる活動という広義の意味)
◆リスク及び機会に基づくQMSにおける計画の質の向上
◆品質パフォーマンスの評価とその結果に基づく改善
◆固有技術の蓄積・活用
などで、認証機関は「これらを如何に組織が適用しているか」、認定機関は「認証機関がどのように組織を審査しているか」について、評価することが必要になるだろう。
前記した4つのうち「事業とQMSとの関わり」に関しての組織の適用に対する認証機関の評価は、理屈上は、当然そうあるべきなのだが、実態としての審査は、難しいだろうな、と思う。
具体的には、例えば、マネジメントレビュー(経営者によるマネジメントシステムの見直し)。
これまでの多くの組織では、認証機関の審査員が、
「マネジメントレビューのプロセスを説明してください。プロセスを実施した結果の証拠(文書化された記録)を見せてください」
と質問されれば、QMSの規格要求事項に沿ったマネジメントレビューに必要な条項のインプットとアウトプットが記述された記録を審査員に見せて、審査員は、その記録を見ながら、追加の質問をちょこっとして、「はい終了」(適合か不適合か、改善の余地があるかの判定)、というスタイルがオーソドックスであったと思う。
しかし、「事業との統合」「リスクに基づく考え方」といった点が2015年版規格では強調されているため、インプットには、レビュー対象となる期間の売り上げやシェア、ライバル他社の動向といった経営会議資料に盛り込まれる生々しい情報が提供されているか、そしてマネジメントレビューのアウトプットが、リスクと機会を考慮した上で決定事項になっているか、といった点を評価しなければならないからだ。
つまり、「QMSの要求事項に適合させるためだけに切り出した記録」、もっと大胆に言えば、あきらかに「審査員に評価してもらいやすいように審査のためだけに作ったマネジメントレビューの記録」を杓子定規に確認して「はい、適合ですね(あるいは不適合ですね)」という単純な評価はできないし、そんな審査をしていれば、認定機関は、当然、認証機関に対してなんらかの指摘をせざるを得ないだろう。
実際のところ、認証制度や認証機関、認証機関の審査員との信頼関係がばっちり担保されている組織(企業)であれば、審査では守秘義務も一応、担保されているから、丸秘社外情報であっても認証審査の場で、例えば、生々しい経営会議の資料を開示してくれるだろう。
しかし、認証制度について「企業のタテマエをサクッと審査してもらって企業のホンネは見せたくない」という組織は、従来規格の審査時と同じように、おそらく「規格要求事項に沿って切り出ししたマネジメントレビューの記録」を作って認証機関側に開示して、お茶を濁すことになるのではないかと懸念される。
賢い審査員なら、当然、組織側から差し出された「マネジメントレビューの記録」が「事業全般としてでなく、QMSのために切り出しされた記録」かどうかの判断はすぐにつくだろう。
しかし、だからといって、実際のところ、「QMSに関することを含めた事業全般についてマネジメントレビューされたプロセスや記録を組織に要求したどり着くことはできるのか?」という点においては、相当困難を極めるであろう。
小手先的には「審査で得られた守秘義務の担保をさらに強化する」といった措置をとり、組織に「ホンネベースの実態」を認証機関に開示していただくよう、お願いベースで審査契約に謳っていくことが必要であると思う。
そもそも論で言えば、認証制度が、中小企業はともかく、大企業にとって、そこまで信頼されている制度か微妙な現状であり、月並みではあるが、認証制度の信頼性を向上させなければ、「組織の実態そのもの」を見せてもらうことは不可能なのだろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ448号より)
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