環境マネジメントシステム規格であるISO14001が今年(2015年)の9月に改訂される。

DISが発行された時点で、各地で関係機関による規格説明会が行われてきたが、FDISが発行されたので、組織も認証機関、研修機関など関係機関も、これをもって、最終的な規格改訂の教育や対応を進めて間違いないだろう。


ISO14001規格を理解する上での個別の各要求事項については、別の機会に述べるとするが、基本事項は、「附属書A.1の一般」と「附属書A.2の構造と用語の明確化」に書かれているので、紹介しておきたい。


「附属書A.1の一般」

◇この規格の要求事項は、システム的、又は全体的な視点から見る必要がある

◇利用者は、この規格の特定の文又は箇条を他の箇条と切り離して読まない方がよい

◇箇条によっては、その箇条の要求事項と他の箇条の要求事項との間に相互関係があるものがある


つまり、当たり前ですが、要求事項にはつながりがあり、単独で箇条が存在するのではなく、要求事項の流れを理解することと、環境状態(外部の課題、内部の課題)や順守義務、コミュニケーションといった複数の箇条に織り込まれているテーマがあり、それを理解することが、ポイントなのだ。


「附属書A.2の構造と用語の明確化」

◇この規格に刃、その箇条構成や用語が、組織の環境マネジメントシステムに適用されるという要求事項はない。

◇組織によって使用される用語を、この国際規格で使用される用語に置き換えることは要求されていない

◇組織は、例えば、「文書化した情報」ではなく、「記録」「文書類」「プロトコル」などそれぞれの運用に適した用語を用いることを選択できる


このことは、明らかに「環境マネジメントシステム規格のために組織のマネジメントシステムを構築してはいけませんよ」ということを強調しているのだろう。

とかく、規格で「マネジメントレビュー」という用語があるから、もともと組織に存在した経営会議をマネジメントレビュー会議と置き換えたり、あるいは、経営会議とは別に、内容的に重複するマネジメントレビュー会議を別に設けたりして、形骸化する例はゴマンとある。


したがって、個人的にも、

「規格用語から離れて組織の業務運営をする上で通常使用されている言葉で環境マネジメントシステムを構築すること」

は、もろ手を上げて賛成である。


ただ、今回の規格により、説明責任が増したことで、規格の意図をきちんと理解していないと、まともにマネジメントシステムを構築できないばかりか、審査対応も従来の規格より、ちゃんとできないだろう。


従来の規格では、審査として「実際にやれることと説明できることは別」という発想があった。

利き手である審査員のインタビューの仕方や理解能力ともかかわってくるが、従来なら、そのプロセスの担当者や責任者が、きちんと質問に対して回答できなくても、実態に即しているか否かは別にして、組織の文書を提示され、結果として実施されていれば、審査側も「まぁいいか」という雰囲気があった。


しかし、組織の通常用いている用語でシステムを構築していくとなると、規格で要求されている意味を正しく理解し、仮に組織で使用している言葉との差分があれば、その組織で使用している言葉の意味を改めるか、あるいは、差分を追加したプロセスを別に組み込まなければ要求事項を満たさない。

したがって、そのあたりを説明できなければ、規格に適合していることを結果として自らの説明責任で実証することはできないだろう。


いままでも、規格の意図を理解して組織のマネジメントとして規格を活用していた組織には、規格が改訂され「説明責任が増した」といわれても苦にすることはないが、通常の経営マネジメントシステムとは別に環境マネジメントシステム規格のためのシステムを別に構築していた組織では、「この文書や記録を見せておけばOK」という風潮があったと思うので、改訂規格での審査対応は、相当しんどいことになるであろう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ446号より)


【好評発売中!】
『ちょロジ ニュースで学ぶ7
つの思考法』(パブラボ刊)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4434176552/bloglogcom-22/ref=nosim/

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)