組織の品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステムの国際規格(ISO)が、今年(2015年)に改訂される。

この改訂のポイントは、「組織の状況の把握」や「リスクベース思考」などいくつかあるが、「事業への統合」という点も主要なポイントのひとつである。


組織の立場でいえば、製品やサービスの品質も環境管理、安全管理、情報管理、施設・設備管理、人材管理などさまざまな組織に必要な管理があるが、「うちはISOを導入しました」といったところで、ISO規格はあくまでも「ISO規格で業務を整理し、抜けや漏れを再構築するためのツール」であって、従来から組織で実態としては実施している様々な管理が新たな概念として登場してきているわけではない、はずである。


ただ、「セクター規格」と呼ばれる、例えば「食品安全マネジメントシステム」のような「食品産業向け」や「自動車産業向け」「ITサービス産業向け」「航空宇宙防衛産業向け」といった規格を除き、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)などは、産業分野を問わず汎用性がある。

そして、それぞれの規格には、「それぞれの規格が意図するその規格を組織に適用させる上での目的」がある。


話を「事業への統合」に戻すと、気になっているのは「事業として従来からやっていることは、99%、品質マネジメントであり環境マネジメントである」という発想の捉え方である。

この「発想」自体は間違っていない。

ただ、だからと言って、単に「実態として管理しているその組織の業務をインタビューして確認するだけ」では、全く意味がない。


具体的に言えば、組織が、「品質目標」として、「不良率の10%削減」を掲げていたとする。

その場合、「不良率を10%減らすことにより不良品として発生する廃棄物が削減され、投入する材料も減らす」ことになる。

つまり、見方を変えれば、この品質目標に取り組むことは、結果として「環境影響の低減」にも繋がっている。


ただ、それは、「品質目標に取り組むことで見方を変えれば環境目標にもなり得る」という話であって、「実態と品質目標に取り組めば結果として環境も良くなる」ことではあるが、「環境への影響」を頭に入れていなければ(発想しなければ)、結果オーライという話であり、「意識的に環境目標として捉え環境影響低減に取り組んでいる」わけではない。


しかし、どうも、何人かのマネジメントシステム監査員との雑談で感じるのは、「事業への統合」を盾に、「業務実態を単に確認して結果として品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステムと位置付けられる行為がなされていればOK」という誤解した発想が広がりつつあるように思う。


もちろん「これは品質の記録です」「これは環境の記録です」というように分けた書式を作って、文書や記録を作れ、ということではない。

目標に関しても、事業計画書や年度事業方針や目標といった既存の企業の中にもともとある文書類で作成されていれば、問題はなく、わざわざ「品質目標管理シート」や「環境目標管理表」といったような「年度事業目標からわざわざ抜き出して作ったような文書」は、作成する必要はない。


ただ、だからといって「事業計画書や年度事業目標」といった文書を確認すれば、品質、あるいは環境マネジメントシステムの審査がすべてOKではない。

ポイントとなるのは、「組織で選択して実施している管理が品質や環境に対してどのように関わっており、自らの活動が、どのように貢献(影響)しているのか認識、理解させ、説明してもらうこと」であると思う。


「結果として品質に関することも環境に関することも事業としてはやっておりOK」というのは、少し乱暴で、「管理、運用している業務と品質や環境との関わりや位置づけを認識、理解していることや説明できること」が重要なのだと思う。


しかし、どうも「品質や環境マネジメントシステム規格への適合を立証するのは認証機関の役目であり、審査されている組織側は、各規格を意識せずとも実態としてできていればOK」という論理が、規格改訂の主要ポイントである「事業への統合」という観点より曲解される気がしてならない。


「管理するべき対象」は、組織の中にゴマンとある。

しかし、リスクベース思考で取り組むべき優先順位をつけて、管理するのは組織自身であり、認証審査の中では、それを組織側に説明してもらわないと意味がなく、結果として品質や環境として位置づけられることをやっているからOKというのは、暴論である。


これから、認証機関の中では、審査のやり方について、議論が進み、認識のすり合わせや審査手順の改訂などが行われていくと思われるが、上記の心配が杞憂にならないことを願いたい。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ425号より)



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