マネジメントシステム認証を目指すある会社の経営者から、

「なぜ、顧客からの信頼感アップや人材育成、コンプライアンス対策にもなり会社運営にプラス効果があるマネジメントシステム認証を返上する会社があるのですか?」

と聞かれた。



マネジメントシステム認証は、仕事の仕組みをガラス張りにして、第三者の認証機関からその仕組みと運用が認証基準に適合していることを認証され、公表される制度である。

一般的には、大きくメリットは二つある。

ひとつは、顧客や社会からの信頼感アップである。

企業や私たち一般ユーザーが、ある企業からモノやサービスを購入するときに、そのモノやサービス自体の品質やそのモノやサービスを生むプロセスにおいて環境や労働安全、情報セキュリティなどが管理された企業であれば、安心して取引ができる。



そして、もう一つのメリットは、認証を受ける企業の立場でいえば、認証を受ける一連の活動で、社内の仕事の仕組みを整理し、標準化することで継続的な改善をより推進することができ、そういった活動を通じて社員の育成も図ることができるのが、マネジメントシステムを導入し、認証審査を受けるメリットである。



では、なぜ、認証を新たに取得する企業がある一方で、返上する企業も多いのか?

これも、大きくふたつの理由がある。

それは、

◇認証審査を受ける意味がない

◇マネジメントシステム活動の事務局業務が引き継がれない

のふたつである。



《認証審査を受ける意味がない》

これは、さらに、「前向きな返上」と「後ろ向きな返上」に大別される。

「前向きな返上」とは、マネジメントシステム認証を導入したことで、会社の仕事の仕組みが整理され、自律して改善する社内体制が培われ、第三者の認証を受けずとも、自社で継続的な改善ができる、と経営者が判断したケースである。



「後ろ向きな返上」とは、マネジメントシステムを導入はしたが、「構築した仕事の仕組み(マネジメントシステム)」と「実際の仕事の仕組み」が2重に存在し、仕事そのものに悪影響を与えているケースである。

この状態になると、第三者機関は、審査を通じて、「ルールと実態のずれ」を指摘することになるが、それが修正されないまま、また翌年の審査の時期を迎え、一生懸命社内は、「実態に反した仕事の記録を作る」ことになる。



この行為を繰り返していると、多くの社員は、「認証審査とは、なんと無駄な仕事をさせる制度なのか。会社にとって認証を持つ必要は対外的にあっても、自分たち現場には、全く意味のない制度である」と認識してしまう。

また、企業規模が大きく、体力のある会社であれば、審査前に実態にそぐわない文書や記録を無理して作ってしまうことができてしまうので、「認証審査とは、そういう建前論を見てもらうものだ」と理解してしまっている。



一方、限られた社員で運営している会社は、この「ルールと実態の不整合をいつまでも指摘される」ので、それをリカバリーする(要は審査のための文書や記録づくりをする)余裕がなく、認証審査を受けること⇒本来の仕事以外のプラスαの仕事をさせられている⇒認証を受ける意味がない⇒返上、という結果になるのだ。



《マネジメントシステム活動の事務局業務が引き継がれない》

こちらは、「後ろ向きな返上」と内容的には近い。

マネジメントシステムを導入する際に、事務局メンバーを選任し、事務局員は、マネジメントシステムに関する講習会や会社が契約したコンサルタントから仕組みづくりを勉強する。

仕組みを作って、なんとか社内教育をして、そのルールで運用し、認証審査を受けて、審査をパスする。

本来であれば、整理され、不足している仕組みを構築した「会社のルール」を日々、運用していく中で、マネジメントシステムについて事務局以外の社員もマネジメントシステムを理解していくものであるが、「日常業務として会社のルールが溶け込んでいない」ケースが多いため、結果的に「認証審査向けの文書や記録づくり」に事務局が腐心する。

その状態で数年経つと、すっかり「審査対策は事務局まかせ」となり、事務局が退職や異動すると「審査準備ができていなくて審査を受けるのはお手上げです」となり、返上するのである。



冒頭の経営者には、このような話をしたら、「うちはそうならないようにしないと」と決意を新たにしていました。

経営者や管理者がマネジメントシステムの効用を理解し、自ら決めたルールが実態にマッチして機能しているか否かを日常的なモニタリングや内部監査を通じて、チェックすれば、マネジメントシステムは上手く回るはずだし、実際、まわっている会社もたくさんある。

月並みであるが、やはり、マネジメントシステムをうまく動かすためには、管理層の理解と決意が重要なのである。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ413号より)




【好評発売中!】
『ちょロジ ニュースで学ぶ7
つの思考法』(パブラボ刊)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4434176552/bloglogcom-22/ref=nosim/

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)