2015128日夜に衝撃的なニュースが飛び込んできました。

それは、「スカイマークが民事再生法の適用を申請した」ことである。


1996年に、JALANAの寡占状態の航空業界に風穴を開けようと政府が1990年代に進めた航空自由化の象徴としてスカイマーク(当時はスカイマークエアラインズ)は誕生した。

スカイマーク以後、新規参入として、エア・ドゥ、スカイネットアジア航空(現在のソラシドエア)、スターフライヤーが誕生した。

しかし、この3社は、現在は、ANAホールディングスの傘下に入って経営の自由度を奪われてしまった。


各メディアは、スカイマークの失敗を、

◇大手と格安航空会社(LCC)に挟撃される「第三極」の経営の難しさ

◇退任した西久保慎一社長の大型機大量購入など、ワンマン経営の失敗

を挙げているが、わたしは、結果論からするとそうなるが、必ずしもそうばかりとは思わない。

3年前には最高益を上げていたスカイマークの成功は、皮肉にも「第三極であったこと」、「ワンマン経営だったこと」も成功してきた要因のひとつだからだ。


西久保前社長の組織経営に対するポリシーの例を以下に挙げてみる。

(一部、ウィキペディアより参考)

◇整備士の移動シフト体制

◇客室乗務員の制服をポロシャツだけにして地上勤務と兼任させる

◇パイロットの制服も廃止し、ポロシャツとウィンドブレーカーだけにする

石垣島 宮古島 では片道5,000円という破格の運賃を提供する

◇他社競合のない茨城 路線においても一貫して低価格運賃を提供する

◇従業員に格差を作る原因になるとして、子会社を作らないことを経営方針とする

◇契約社員は社内試験によって正社員化し長期雇用を基本とする

国土交通省 からの天下り は一切受け入れない

◇排他的組織だとして記者クラブ での会見はしない

◇一度退職した社員を再雇用するブーメラン制度や自社機を使って社員旅行を行っている


上記から見えることは「徹底した効率化」である。

ルールでは「発着する空港に整備士を常駐させること」となっているが、「一日一往復しかない路線」であれば、「整備士」の業務効率は非常に悪い。

そこで、「整備士を自社便に乗せて掛け持ちさせる案」を考えた。

また、客室だけでなく、地上係員、清掃員との兼務業務をさせることで業務の効率化も図った。


「不採算路線からの短期間での撤退」イメージから、「公共性に欠ける経営」との批判もあるスカイマークであるが、社員に対しては「長期雇用や再雇用」など働きやすい環境を作っていたといえる。


つまり、「大手航空会社がしてこなかった業務改革」をすることでコストを下げ、収益性を確保してきたのだ。

また、こうした素早い経営判断は、「ワンマン経営」だったことで、成功をおさめたともいえる。


しかし、各メディアも指摘するように「海外路線就航」を狙って「エアバス社の大型飛行機A380」を6機発注したところから経営のつまずきが始まった。

西久保氏は、目まぐるしく業界環境が変化するIT業界にいた経験から、常に「先読み経営」をしてこれが2011年の最高益を記録した。

しかし、円安と2012年にピーチアビエーションやジェットスタージャパンなどLCCの参入で経営が圧迫され、A380を解約することで多額の違約金が発生してしまったわけだ。


西久保氏が経験したIT経営者時代の数々の経営危機は、「カミカゼ」が吹き、なんとか乗り切ってきた西久保氏であるが、今回は、「マスコミのウケの悪さ」(記者クラブ排除)、「政府や役所ウケの悪さ」(天下りなし)、「銀行ウケの悪さ」(無借金経営によるメインバンクなし)という要素もあり、追い風は吹かなかった。


今後の流れとしては、ファンド中心に自主再建を目指すといわれているが、最終的には、大手航空会社の傘下に下ってしまうのだろう。

航空業界だけでなくあらゆる産業に「規制緩和」を国は進めているといわれるが、銀行を頼らず、天下りも受け入れていないと、「完全な独立組織体制」を志向すると、「いざという時にはつぶされてしまう(助けてくれない)」結果になってしまうのかもしれない。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ422号より)


・・・と上記の記事を書きましたが、2015131日付の読売新聞が、

「民事再生法の適用を申請した国内航空3位のスカイマークが、投資ファンド「インテグラル」からつなぎ融資などで約90億円の資金支援を受ける方向で最終調整していることが明らかになった。運航継続に必要な当面の資金繰りを確保できるとみられている。

今後の焦点は、本業の航空事業や金融機関の支援先探しに移る。」

と報じていました。

おそらく、羽田のSKY発着枠は魅力的だから、ANAホールディングスをはじめとして大手の支援を受けることになるであろう。


しかし、航空業界に風穴を開け、数々の規制緩和と戦いながら、社会的に幾多の物議をかもし出しながら、独自の戦略でここまで成長してきたSKYが、同時期に立ち上がった新規参入会社の現状と同じように、大手の参加でこじんまりと「子会社」としての立場で独自性が失われた航空会社となるのは、個人的には寂しい。

民事再生法申請を受け、わたしの友達の多くは、SKYで予約していた便をキャンセルし、どんどん別の航空会社に切り替えている。

安定性・確実性を考えれば、仕方がないが、悲しいなぁ、と思う。



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