「企業のマネジメントシステム(仕事を管理する仕組み)を監査するマネジメントシステム監査」の世界で、最近、流行っているのが「マニュアルや規定、基準といった書類を切り口にした審査から、業務実態を切り口にした審査へ」という流れである。

仕事仲間の業界関係者と話していると、多くの認証機関の監査員研修会で、「現地審査では、書類を確認することよりもインタビューを中心に実態を確認してください」とやたらと強調しているのだと言う。


しかし、正直に言えば「何を今さら・・・」である。

真っ当な監査員なら、マネジメントシステム監査が日本に登場した約20年前から、「業務実態についてインタビューを通じて確認することに重きを置いた審査」は実行している。

つまり、「文書」や「記録」というのは、その会社の仕事に対する考え方やルールをきちんと熟知していなくても、体裁を整えることができる。

いい方を変えれば、「なぜ、そのように記録するのか」を理解していなくても、様式にそって機械的に記録すれば、結果としては「ルール通りの業務が実施」されているし、極端にいえば、監査の前に、記録類を総点検して、不備を修正しておけば、監査上の指摘はでなくなる。


だから、真っ当な監査員は、以前から規格要求事項を頭の中に入れて、考慮しながら、徹底して「仕事のやり方、考え方」をインタビューで確認していた。

「考え方」を確認しなければ、ある仕事のプロセスについての記録を単に確認したところで、再現性がなく、「たまたま結果としてそのように実施していた」のか「必然性をもって結果としてそのように実施していた」のかが分からない。


マネジメントシステム監査において重要なのは、「その組織から商品やサービスを購入する人(顧客、消費者など)に対する信頼感や安心感を第三者である認証機関の監査員が代行して確認し、お墨付きを与える」ことである。

したがって、企業のあるプロセスやシステムの仕事をする際に、人によって考え方が全くバラバラであったり、たまたまであったりすることは、その企業のマネジメント能力が一貫していることが担保できない。

だからこそ、「インタビューして考え方を確認すること」が本質的に重要なのである。


ただ、冒頭の話に戻れば「書類中心からインタビューを通じた業務実態中心への監査」は、私たちから言わせれば「当然」であり「当たり前」の話ではあるが、しかし、注意しなければならない点もある。

それは、企業の管理者、あるいは、社員、職員、パート、アルバイトといったスタッフが「マネジメントシステムの構造を背景として意識して仕事を実施しているかどうか」が、「業務実態を単に確認するだけではわからない」という点である。


少々、表現が硬くなるが、「マネジメント能力が一貫している」ということは「マネジメントシステムが確立している」ことに他ならないが、「マネジメントシステムが確立している」という背景には「マネジメントの基本原則を理解している」ということがあって、初めて成立する。

例え話が飛ぶが、プロ野球選手に「あなたのトレーニング方法、バッティング、守備について説明してください」と問えば、一流のプロ野球選手であれば、トレーニング理論やバッティング理論を背景として、自分がやっていることを、きちんと説明できるだろう。

しかし、二流のプロ野球選手、あるいは草野球レベルのアマチュアなら、単に経験則を語るだけで、実施していることが「理にかなった方法」であることは説明できない。


ポイントは「背景に理屈というか法則があり、それに基づいている」のか「単なる経験則」なのかの違いである。

話を戻せば、業務実態を単に確認するだけでは、「どんな理屈、あるいは法則をよりどころにそのように考えて業務を実行しているのか」がわからないのだ。

もちろん、「理屈や法則」をスタッフレベルに説明しろ、とは言わないが、少なくとも「たまたまそうやっていた」というレベルの確認では、本質的には「マネジメントシステムが確立していること」の担保にはならない。


よく「業務実態が適切なら、認証機関の監査員の立場としてはそれでいいんだよ」と言われる方がいらっしゃるが、それでは、本質的には「文書や記録を中心に確認して、結果としてやっているか、やっていないかをチェックしていた時代の監査(要は、結果オーライ)となんらかわらない」ということに気づいて欲しいと思う。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ216号より)



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