現在は悠々自適な老後を過ごされている大先輩の経営コンサルタントの方が、現役時代に勉強し、使用していた資料を整理・処分されると言う。

そして、もし必要な資料があるなら差し上げたい、とのお話しがあり、ご挨拶を兼ねて訪問させていただいた。


資料はたくさんあり、まだ、熟読していないが、さらっと読んだ中の資料で興味深かったものが「製造業をダメにする十カ条」。

その十カ条を以下に引用させていただく。

(引用ここから)

1 工場のトップがリーダーシップを発揮しない

2 各管理機能がしっかりと分野を守って業務を行っている

3 資材部門が強力で安価な材料を購入している

4 営業部門が得意先の要望に忠実である

5 現場のサークル活動で大きな成果が上がっている

6 購入した機械をそのまま使っている

7 設置した設備への追加投資をしない

8 プロダクトの開発にばかり目が向いている

9 技能者の育成に力を入れていない

10 工場の能力の限界を知らない

(引用ここまで)


「十カ条」をざっと見ると、たとえば「1や9」は「なるほど」とすぐに合点がいく。

しかし、その他の項目は、「えっ?!それってダメなの?」である。

たとえば、「4」の「営業部門が得意先の要望に忠実である」は、「顧客満足の視点から考えてよいことでは?」と思う。


しかし、これが落とし穴である。

「4」が「ダメな理由」は、何かと言えば、「製品特性や技術が分からないと営業マンが闇雲に要求を受け入れてしまうこと」である。

「闇雲に要求を受け入れる」ことのデメリットは「新しいスペックがどんどん追加になり、結局、オーバースペックになりかねない」のである。

つまり、オーバースペックになると、本来、その製品には必要のないレベルまで精度を上げることになり、不必要なプラスαの管理点が増え、最終的には管理コストが増える、という状況になる。

これが「4がダメな理由」なのだ。


したがって、求められる営業担当者は、「得意先の要望をたくさん聞いてくるのは、いいことではあるが、要望を単に聞いてくるだけではなく、本当に得意先のメリットになる形に直して再提案すること」が正しい思考(心得)なのである。


他の項目も、一見すると「えっ?!」というものがあるが、よくよく考えると、「なるほど」と理解できる。

中には「製造業に限った話ではなく、サービス業に置き換えてもなるほど」と参考になるものがあるので、機会をあらためて、私なりの解釈で紹介していきたいと思う。


それにしても、経営コンサルタントの大先輩とお話しして印象的だったのは、

「最近はどこの企業も“業務の効率化やスリム化”という理由でどんどん手順書や基準書のボリュームを簡素化(ページ数を薄くしカットする)しているが、疑問が残る」

という言葉でした。


私を含めて、「現場の人が読まない、あるいは、読んでもよく理解できない規定は使われていないのだから、分かりやすいように改訂するか、読んでいなくても日常業務に支障がないところはどんどん削りましょう」というような指導をするケースが多い。

しかし、大先輩曰く「企業が長年の成功と失敗の中で構築して積み上げてきたノウハウをそんなに簡単に捨ててしまっていいのだろうか?」というのです。


確かに「一見、普段は使わない、あるいは不必要と思われる手順も、実は、顕在化した問題が発生していないから“必要ない”と感じているだけであって、本当に必要ないかどうかの検証は不十分」なのだ。

中央道の笹子トンネルの事故も、「検査を簡素化しても大丈夫」と大してその是非を検証することなく業務をスリム化してきたツケである。


私ごとですが、今回の訪問は自分の仕事を振り返る意味でも「なるほど」と感じた出来事でした。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ315号より)



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