「会社の経営の仕組みを監査する仕事」・・・いわゆる「マネジメントシステム監査」の性格は、一般には、まだまだ正しく理解されていない。


マネジメントシステム監査の本質は「きちんと仕事ができる」あるいは「きちんと仕事ができている」ことに対して「必然性があるのか(あったのか)」である。

例えば、「苦情を受け付けた場合、苦情に対してきちんと対処し、苦情原因を追究し、再発防止策を実施していた」とする。

その場合、「結果的にきちんと苦情対応が実施されていたことでOK」とするならば、それは、「検査型や取締型の監査」である。


「マネジメントシステム監査」の場合は、「診断分析型であり今後の仕事保証型の監査」であるから、「その事例の苦情対応がたまたま、きちんと実施されていた」のではなく「他の事例であっても、確実に実施される必然性があったのか』を監査では確認しているのだ。

「確実に実施される必然性がある」と判断する事例としては、

◇組織の複数の人にインタビューして全員が同じような考えや判断基準で仕事をしている

◇その仕事に対する手順や手順書があり関係者に周知されている

◇ある人しか知らない(できない)という属人化した状態でなく情報共有される体制がある

といったことになる。


つまり、このような状態に組織がなっていることを監査で確認しなければ、マネジメントシステム監査によって「その組織の今後の仕事を保証すること」はできないのである。


先日、ある会社の地方事業所が、はじめて監査を受けることになり、訪問した。

その部門長は、はじめてマネジメントシステム監査を受けるので、その際に、「マネジメントシステム監査は結果の良し悪しそのものを問うのではなく、仕事に対する考え方やその手順が確立されており、良い結果であれば、そこに必然性があるか否かを確認する性質の監査であること」を、雑談を交えながら説明した。

しかし、監査を実施してみると、「実施しています系」の説明に終始して、「実施することに必然性があったのか」は、正直、まったく確認できなかった。


監査する側としては、このような反応をされる場合は、「あ~、この人、自分はちゃんとやっていたって自己の正当性を一生懸命主張し、自分に非はありません、って言いたいだけの人なんだなぁ」と心の中で思って、ニコニコして相手の(虚しく意味のない)説明をウンウンと聞いているしかない。

若いころだと「(おっしゃられたことの必然性を確認したいので)手順を説明するか計画書や手順書、記録されている実施結果やそういった議論をされたことを提示できる議事録などを見せてください」と詰め寄った質問をしたのだろう。

しかし、そんな質問をしたところで「自分は結果的にはちゃんとやっている」としか説明しない人に、監査の場だけで「マネジメントシステム監査の性格」を理解させることは無理だし、逆にどんどん険悪な雰囲気になってしまうだけだ。


このようになってしまう場合は、

◇そのような説明をした人が監査を通じて自分の非を社内で問われたくない

(※監査側は、仮にできていなくても、その人の責任を問うことはない)

◇社内体質として「問題に対して個々の責任を追及する風土」がある

◇「マネジメントシステム監査が実施している仕事の必然性を監査人に示す性質のもの」であることを理解していない

という原因が考えられる。


もちろん「理路整然と監査人に対して説明する能力がない」=「仕組みがない」ではないからマネジメントシステム監査は「説明の巧みさ」を問うものではない。

また、仮に、「たまたま実施して問題がなかった(=必然性がなかった)」ケースであっても、監査側のインタビューの方法によっては、被監査側が「本来は確実にそのように実施する手順を確立しておかなければダメなんだ(=必然性を構築する必要)」と気づいてもらえれば、監査側としては御の字である。


しかし、なかなか、「監査という限られた時間内」で、そういったことを気づかせるのは難しい。

ただ、会話の端々で「この人にはどのようなアプローチで伝えていけばうまく伝わるだろうか?」と試行錯誤を重ねることも、監査側としては面白いのである。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ229号より)


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