審査登録機関の職員に聞いた話であるが、認証を止める際に理由書を提出してもらっているという。
その理由書に書かれる内容として多いのが、
「業務が忙しく管理業務ができないため」
というものだそうだ。
もちろん、止める本音は、
◇審査費用など認証維持コストが高い
◇業務改善ツールとしての費用対効果が薄い
◇取引先からの要求もなくなり必要が無くなった
など他にも理由はあると思うが、「業務が忙しく管理業務ができないため」が本音だとすると、マネジメントシステムの役割や意義として矛盾した話だと思う。
マネジメントシステムをどの程度作り込むか、は本来、組織規模や業種特性、関連法規制、業務の複雑さ、リスクの程度、顧客や製品要求事項など「組織が有する要求事項」の程度により決まる。
従業員数が少なく、4~5人の会社であれば、ジョブローテーションなども基本的にないだろうから、阿吽の呼吸で、実際の所、仕事はまわる。
日常業務の中でトラブルが起きるとしたら、伝達ミスなどコミュニケーションの部分が主であり、そういった仕事は、再発防止のための文書化された手順は必要になるし、そういう点が整備されているから「マネジメントシステムの認証を受けている企業が取引の際に信頼性が担保されていて、優先的に発注される」のだ。
ただ、個々の役割については、「その担当者が辞めた場合のリスク」という点では文書化された手順が必要になるが、日常的には、審査員に「手順は文書化しないんですか?」と言われたところで、ホンネは「俺の頭の中に入っているから文書化の必要性はないんだよね~」という発想であろう。
つまり、マネジメントシステムは、少なくとも自分達目線で考えれば、
◇トラブルを起こさない程度に仕組みを作っておく
◇ムダな仕事をなくすための仕組みを作っておく
◇仕事の改善をするためのベースとなる手順を作っておく
といった点で存在するわけである。
だから「業務が多忙で管理業務ができない」とは、言いたいことはわかるが、だからこそマネジメントシステムの改善が必要になるので、なんだか矛盾した話なのである。
実際の所、認証を止めた会社(従業員規模30人程度)に、研修会講師の仕事で訪問したときに、職員に話を聞いたことがあるが「改善するのが面倒で止めた」という話を聞いた。
その会社では、事務局担当者が几帳面な性格で、コンサルタントに言われたことを忠実に従っていたため、社内の仕組みが、組織規模に対して細かく規定されていたのだ。
しかし、その事務局担当者が辞めることになり、引き継いだ次の担当者は、仕組みが複雑で、半ば「審査のために作られたマネジメントシステムを管理できなくなった」のだ。
審査員は「仕組みを軽くするアドバイス」を審査のたびに熱心にしてくれたそうであるが、引き継いだ担当者からすれば、「仕組みとその管理レベルを実情に合わせて見直す作業」をするよりも「前任者が構築してきた実情より重たいシステムを踏襲する方が楽」なので、見直しをしなかったのだ。
そうしているうちに、仕事が忙しくなり重たい仕組みを管理することが厄介になり、2代目経営者は「先代時代に導入したマネジメントシステム認証に不信感を持っている」ことも重なり認証を返上した、ということらしかった。
その話を聞いて、何とももったいない話だな、とつくづく思った。
その会社は、2代目経営者になり、業績は伸びており、これからが本当の意味でマネジメントシステムを構築管理し、継続的に見直していく必要性が重要になるはずなのだ。
しかし、「実情に合わせて改善するのが面倒だから」という理由では止めてしまった。
本来、仕事のムリムダを排除するためのツールでもあるはずのマネジメントシステムなのに。。。
「サイズの合わない服を直すよりも、合わない服を着続ける」ような話で、「急がば回れ」なのだが、将来的な仕事のしやすさよりも、目の前の仕事の処理を優先してしまったのだろう。
このような状態の時は、経営者が気づくべきなのだが、マネジメントシステム認証に不信感を持っていることもあり、「マネジメントシステム改善のための時間を割く」という経営判断をしなかったのだろう。
もったいないし、残念な話である。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ333号より)
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