企業のマネジメントシステムを審査する仕事では、その審査を管理している組織のルールにもよるが、たいていは、「4年」とか「連続3回」といったように「審査員を担当できる年限や回数の基準」が設けられている。
こうしたルールは、「第三者認証」という審査の性質上、審査結果について「客観性、公平性、透明性」を持たせる意味合いもある。
審査は、主に、受審企業の責任者や担当者とのインタビューを通じて行われるから、「コミュニケーション能力」が仕事の質を決める大きな要素である。
したがって、審査員は、インタビュー相手に、できるだけ、「ありのままの組織の状態」を聞き出すための工夫をしている。
どうしても日本人の場合「審査を受ける」となると「あら探しをされる」と思う方が多い。
だから、「あら探しではないですよ~」「困っている点があったらお話を聞きますよ~」「みなさんが気づいていない不効率やリスクのある業務を見つけますよ~」という雰囲気を初対面の相手なら、話し方やちょっとした雑談を加えて、なおさらそういったオーラを出さないとダメだ。
ただ、そうした「コミュニケーション」を工夫する分、その企業に何度も訪問させていただいていると、「人間同士のやりとり」であるから、良い意味、悪い意味を含めて「慣れっこ」「なぁなぁ」の部分は生じる。
長く審査を担当して良い部分としては、
◇その企業の特徴をよく把握している
◇その企業の年々の変化を把握している
◇したがってインタビューもスムーズにいく
といった点がある。
逆に、悪い部分としては、
◇その企業の特徴が分かっているので「あたり前」と思って気づかない部分が生じやすい
◇その企業について、違った切り口でインタビューできない
といった点がある。
少し前のことであるが、次年度の審査から、認証機関が決めた「担当審査員の基準」のルールより、担当から外れる審査先の審査に訪問した。
その会社の審査を終え、最終報告も済ませた後に、経営者さんや事務局さんと雑談&お茶タイムとなった。
本来であれば「さっさと審査先企業をあとにして帰らないといけない」のであるが、次回から審査を担当しないとなると、なんとなく、双方の気持ちがちょっと名残惜しかったのだ。
この企業さんの場合は、マネジメントシステムの導入直後の登録審査から審査を担当していたので、この4年間の変化について、個人的には感慨深いものがあった。
みんなで雑談をしていて、一致したこの企業の変化は、
◇社員が「問題意識」持つようになった
◇社員が「改善提案」する雰囲気が芽生えた
◇マネジメントシステム規格を規範として自分の仕事を振り返る思考習慣ができた
◇管理職に「業務を標準化して絶えず仕組みを改善する」という考えが身についた
といったものだ。
マネジメントシステム審査の本質的役割は、『審査を受け認証された企業の顧客に信頼されるサービスを提供すること』である。
しかし、実際に認証機関が対価をいただいているのは、受審企業からである。
したがって、受審企業がマネジメントシステムを経営に活かして、審査を通じて企業自らが改善点に気づき、結果として成長を支援する役割も担っている。
「淡々と審査する」のが認証機関の役割で、「企業がマネジメントシステムを効果的に活用しているか否かなんか評価しなくていい」と言い切る認証機関もある。
だが、それだけでは「形式的な規格や関連法規制への適合性」は担保できても、それ以上の付加価値はなく、担当審査員として担当した意味はない。
多少、自己満足になってしまうが、雑談タイムを通じて、少しずつではあるが、マネジメントシステムが活用されていることを知り、自分が審査を担当した意味が少しはあったのかな、と思う。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ272号より)
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