2012916日に、アサヒビール名誉顧問の樋口広太郎さん(86)が急性心不全で亡くなった。

ご存知のように、樋口さんは、住友銀行(現三井住友銀行)出身。

副頭取まで上り詰めたが、当時の実力者、磯田一郎会長と対立し、数ある住友銀行関連の社長ポストを蹴って、当時経営不振で「夕日ビール」と陰口をたたかれていたアサヒビールに社長として転出した。

1986年に社長に就任後は、アサヒビールの再建に取り組み、現在も看板商品である「スーパードライ」の投入を1987年に決断し、起死回生の大ヒット。

当時は「苦いビール」が主流で「辛口ビール」は斬新で、爆発的なヒットにより、業界3位から2位に躍進させる原動力となった。

樋口さんは、数々の名言を残しているが、有名なものは、

◇前例がない、だからやる!

◇チャンスは貯金できない

であろう。

もちろん「世間のニーズがないもの」に対して「前例がないからやる」では「単なる無謀」であるが、「無難に済ましていては新しい発想は生まれないし、突破口は見つからないからさらなる飛躍はできない」ということなのだろう。

「チャンスは貯金できない」もその通り。

しかし、私も含めて、多くの人は、躊躇して逃してしまうんですよね。

インターネットで、その他の樋口さんの名言を調べていたら、アサヒビールの社長時代に社員向けのメッセージを送っていて、それをまとめた「仕事十則」と「管理職十則」というものがあることを知った。

以下にメモ代わりに引用しておく。

ピンとこないものもあるが、自分なりに解釈すると、ひとつひとつが「なるほどなぁ」と思うものばかりである。

(引用、ここから)

【仕事十則】

1)基本に忠実たれ。基本とは困難に直面したとき、志を高く持ち、初心を貫くこと。常に他人に対する思いやりの心を忘れないこと。

2)口先やアタマの中で商売をするな。心で商売せよ。

3)生きた金は使え。死に金を使うな。

4)約束は守れ。守れないことは約束するな。

5)できることとできないこととをハッキリさせ、YES/NOを明確にせよ。

6)期限のつかない仕事は「仕事」ではない。

7)他人の悪口を言うな。悪口が始まったら耳休みをせよ。

8)毎日の仕事をこなしていくとき、「今、何をすることが一番大事か」ということを常に考えよ。

9)最後までやりぬけるか否かは、最後の一歩をどう克服するかにかかっている。これは集中力をどれだけ発揮できるかによって決まる。

10)ふたりで同じ仕事をするな。お互いに、相手がやってくれると思うから「抜け」ができる。ひとりであれば緊張感が高まり、集中力が生まれて、よい仕事ができる。

【仕事十則】

1)組織を活性化しようと思ったら、その職場で困っていることを、ひとつずつ潰していけばよい。人間は、本来浮かび上がろうと努力しているものだから、アタマの上でつかえているものを取り除いてやれば自ずと浮上するものだ。

2)職位とは仕事のための呼称であり、役割分担を明確にするためにあるものだと考えれば、管理とは何かがキチンとでてくる。

3)「先例がない」「だからやる」のが管理職ではないか。

4)部下の管理はやさしい。むしろ、上級者を管理することに意を用いるべきである。

5)リーダーシップとは部下を管理することではない。発想を豊かに持ち、部下の能力を存分に引き出すことである。

6)「YES」とは部下だけで返事をしてもよいが、「NO」の返事を顧客に出すときは、上司として知っていなければならない。

7)人間を個人として認めれば、若い社員が喜んで働ける環境が自ずとできてくる。

8)若い人はわれわれ自身の鏡であり、若い人がもし動かないならば、それはわれわれが悪いからだと思わなければならない。

9)若い人の話を聞くには、喜んで批判を受ける雅量(※)が必要である。

(※ 雅量・・・おおらかで、人をよく受け入れる性質。度量が大きいこと。

10)結局、職場とは人間としての切磋琢磨の場であり、練成のための道場である。

(引用ここまで)