よっぽどの特色を出さないと「個人商売」「個人商店」的ビジネスは成立しにくい時代になってきたな、と思う。
「個人商店」的ビジネスで、発注先が「企業」や「官公庁」になると、余計に成立しにくくなる。
成立しにくいひとつめとして、具体的には、これらの発注先は、「取引先としての透明性、信頼性」を求めるからだ。
一昔前なら、その会社の評判や信頼できる人からの紹介、業務実績などで取引開始が決まった。
しかし、今では、「個人情報保護体制」「環境管理体制」「品質管理体制」「コンプライアンス管理体制」などさまざまな要求が発注先から生じる。
それらに対応するとなると、なかなか「個人商店的組織」では難しい。
また、ふたつ目の理由として、顧客が「サービスを見比べて選ぶ時代」になったからだ。
つまり、絶対とは言わないが、多くのビジネスの場合、買い手側は、まずはウェブサイトをチェックする。
この時点でウェブサイトがないとすでに買い手の選択基準から落ちている可能性が高い。
要は、知名度とサービスレベルがある一定ラインを超えないと買い手に認知されないし、リピーターとならないのだ。
だから、町の商店街を眺めれば、酒屋さんや雑貨屋さんはコンビニになり、喫茶店はスターバックスやドトールコーヒー、ベローチェといったコーヒーチェーンに代わっていった。
「町のクルマ屋さん」も同じである。
大手自動車メーカーの名前がついているクルマ屋さんでない、いわゆる「町のクルマ屋さん」の場合、サービスメニューとしては、「新車販売、中古車販売、修理、点検、車検、カー用品の販売、クルマのレンタル・リース」などがある。
しかし、修理や車検については、買い手側はネットで「どこにお願いしようか?」と検索する時代になった。
そこで、多くの「町のクルマ屋さん」は、「修理・整備の専門チェーン」や「車検サービスの専門チェーン」に加盟するところが増えた。
「町のクルマ屋さん」に数十社訪問した経験からいえば、「加盟した当初はいいが、その後は維持するのが大変」というところが多い。
要は、大手チェーンに加盟することで知名度はアップするが、その後のリピーター確保や新規拡大は、加盟店ごとの「企業努力」が必要なのだろう。
「加盟しただけ」では、一時的なカンフル注射にはなるが、業績は長く続かないのである。
ある「企業努力に頑張っているクルマ屋さん」にお伺いした時のこと。
お話しをお伺いしていて、問題点を見つけた。
それは「経営方針の方向性がバラバラ」ということである。
そのクルマ屋さんは、経営者の方が信念を持って会社を立ち上げており「その会社独自の経営方針」がある。
そして、修理・整備サービスは大手チェーンに加盟しているのだが、その「修理チェーン店の経営方針」がある、
さらに「車検サービス」「損害保険サービス」についても「加盟店や代理店」であるため、それぞれの「経営方針」がある。
私は客観的にそれら経営方針を見て「相反する方向性がある」と思った。
詳細は割愛するが、例えば「お客様との付き合いを一生涯サービスとするかそうでないか」という方向性の違いである。
この違いは、実は大きい。
例えば、車を売る場合にしても、「予算がありそうだから高い車を売ってしまおう」と考えるのか「今後のセカンドカーの購入も狙って、それによる車検や修理収入も増やせばいいから、お客様のライフスタイルに合ったリーズナブルな価格のクルマをおススメしよう」と考えるかの違いである。
こうした「経営方針の違い」を社内で交通整理しないと「組織としての方向性がバラバラ」になる。
しかし、意外と、こうした点に「無頓着な経営者」は多い。
個人商店としての知名度や業務マニュアルがないために「各種サービス大手に加盟」するのはいい戦略だと思うが、この点に注意しなければ、「ちぐはぐな経営」になってしまう。
いずれにせよ、現代社会においては「ふつうにサービスを提供すれば経営が成り立ってきた」時代ではなくなった。
個人商店的ビジネスを展開されている組織の経営者はこうしたことを肝に銘じた経営管理をする必要がある。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ294号より)