ロンドン五輪体操男子の日本代表が8月8日にロンドン市内で会見を行い個人総合で金メダルを獲得した内村航平 選手が団体戦の選手の選考方法について提言したことがメディアで報じられていた。
内村選手の提言は、
◇種目ごとに最高の3人を選ぶことが必要
◇代表選考を中国式にするべき
というもの。
若干「マニアック」な話になるが、まず、団体戦の得点方法をおさらいしておきたい。
体操男子の団体戦の得点は、
◇予選が5-4-3方式
◇決勝が5-3-3方式
である。
つまり「予選」は「5人の選手のうち4人が演技をして上位3人の総得点」で争い、「決勝」は「5人の選手のうち3人が演技し、そのすべてがチームとしての得点になる」のである。
この得点システムに対して、
日本は代表選手を「オールラウンダー3人、スペシャリスト2人」
中国は代表選手を「オールラウンダー2人、スペシャリスト3人」
を基本に選ぶのだ。
実際、ロンドン五輪では、予選で、
日本チームは「3選手が全6種目を演技」
中国チームは「1選手が全6種目を演技」
したのだ。
つまり、「団体戦の総得点」を向上させるためには「高得点が確率よく出せる」ように、スペシャリストを各種目とも最低2人、できれば3人揃えているのだ。
そうすることで、決勝では、中国の場合、日本の内村選手のように「全6種目に出場」させて体力を使い各演技の精度が落ちるような戦術はとらない。
要は、代表5選手が、各人スペシャル種目を2~3種目揃えておけば、決勝では「種目ごとに作業分担」して得点を確実に稼げばいいのだ。
もうちょっと解説すると、
「決勝は3選手の得点×6種目」
だから全18演技。
これをパターンに分解すると、例えば、
1)2選手が3種目演技、3選手が4種目演技
2)3選手が3種目演技、1選手が5種目演技、1選手が4種目演技
3)3選手が2種目演技、2選手が6種目演技
などになる。
3)のケースはオールラウンダーの決勝での体力的&精神的な負担が大きいが、1)や2)のパターンであれば、スペシャリストは「全6種目のうち得意種目3つに集中」すればいいし、オールラウンダーは「4種目あるいは5種目を担当」すればよく内村選手のように「6種目全力投球」しなくていいから、演技精度を上げることができるだろう。
また、この方式にすれば、「体操競技全体でのメダル数」も増やせる可能性が出てくる。
体操競技で1ヶ国が獲得できる最大のメダル数は、
◇団体:1
◇個人総合:2(各国2人まで)
◇種目別:12(2×6:各国各種目2人まで)
の合計15個。
今回のロンドン五輪での日本と中国のメダルの可能性と結果は、
◇日本:団体1、個人総合2、種目別3(最大のメダル可能数は6個)
→結果的には団体銀、個人総合金、種目別銀のメダル総数3つ
◇中国:団体1、個人総合0、種目別4(最大のメダル可能数は5個)
→結果的には団体金、種目別金2を含む4つでメダル総数5つ
となる。
つまり、
「日本の方がメダルの数を多く取る可能性は高かったが確実に取得したのは中国」
なのである。
したがって、
◇団体での「金」の可能性を上げる
◇メダル獲得総数の可能性を上げる
という点に徹するのであれば「日本式選考より中国式選考」の方に、現在の競技ルールでは分(ぶ)があるのだ。
日本の体操界は「オールラウンダー」にこだわっているが、私たちファンの立場でいえば、
「オールラウンダーが活躍する個人総合」も「スペシャリストが活躍する種目別」のどちらもテレビ観戦で楽しみたい。
しかし、今回のロンドン五輪では、日本人選手が種目別に進めたのは「3人2種目」であり、4種目では日本選手の出場がゼロでワクワクしながら種目別を見る気分は半減した。
少なくとも「団体戦の金メダル奪取」に強いこだわりを持つのであれば、内村選手が提言したように「中国式選抜」である「オールラウンダー2人、スペシャリスト3人」の選考の方に優位性があると言えるのだろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ293号より)