ロンドン五輪の第13日(88日:日本時間の9日未明)は、レスリングの女子48キロ級の小原日登美選手(自衛隊)と63キロ級の伊調馨選手(ALSOK)が、金メダルを獲得した。

小原選手も伊調選手も世界選手権で何度も優勝をしており、金メダルは当然のように期待されていたので、本人たちの重圧は相当のものだっただろう。

小原選手の場合は、結婚前の旧姓「坂本」の方が、馴染みがある。

メディアでもよく報じられているように、小原選手の場合は「悲運のスーパーヒロイン」なのだ。

女子レスリングが五輪に採用されたのは2004年のアテネ五輪。

そして、小原選手の専門種目は51キロ級。

しかし、おそらく競技人口など関係から、世界選手権では採用種目の51キロ級が五輪では採用されていない。

そのため、五輪に出場するとなると、48キロ級か55キロ級になる。

しかし、48キロ級にはアテネ、北京で連続銀メダルの伊調千春選手がおり、また、小原選手の妹も48キロ級。

55キロ級にはご存知、女王吉田沙保里選手がいる。

そのため「世界選手権の女王」でありながら、五輪出場は31歳になった今回が初出場だったのだ。

金メダルが決まった瞬間には、伊調選手の時は「あっぱれ!」とテレビの前で手を叩いていたが、正直、小原選手の時は、じーんとして、テレビの前で思わず、もらい泣きしてしまった。

伊調選手の場合は、やはり、私たち多くのミーハー応援団からすれば「アテネ、北京、ロンドン」の3連覇が圧巻だ。

しかも、今大会は、1ピリオドも取られていない完全な横綱相撲。

前回北京では、五輪終了後、引退宣言のような発言をして1年ほど競技を離れた。

優勝インタビューでは、「今後」についてどんな発言をするのかと注目していたが、伊調選手は「やり残したことがある」「レスリングが好き」といい「現役続行」を期待させる発言をしていた。

現在28歳だからリオでも、年齢的にはまだまだイケる。

それにしても伊調選手の「やり残したこと」とは、「自分のレスリングを貫いて勝つこと」なのだという。

アテネ、北京では「ディフェンスの強い伊調選手」だったが、北京の後に、「先手攻撃の伊調」にスタイルを進化させた。

しかし、伊調選手曰く、今回のロンドン五輪では「相手によって試合運び(戦術)を変えてしまった」というのだ。

「相手によって戦術を変えるのは勝負の世界では当たり前」である。

しかし、伊調選手は「相手によって戦術を変えなくても勝つことができる自分のレスリングスタイルを貫くこと」をどうも目標にしているようなのだ。

野球に例えれば、剛速球投手が、決め球に変化球を使って打ちとるのではなく、決め球は「直球勝負」にこだわるのと似ている。

本当に「すご過ぎる」と思う。

伊調選手には、しばらく、からだと精神の休養を取っていただき、リオ五輪での「前人未到の4連覇」に挑戦して欲しいと思う。