ロンドン五輪の女子マラソンが終わった。

結果的には、2大会連続で表彰台はおろか、入賞も逃す結果となった。

この結果は、昨年の世界陸上をはじめ、ここ数年の世界陸上の女子マラソンの日本人選手の結果から考えると当然の結果なのかもしれない。

しかし、日本人の多くには、1992年のバルセロナの有森裕子さんの銀、1996年のアトランタの有森さんの銅、2000年シドニーの高橋尚子さんの金、2004年アテネの野口みずきさんの金という「4大会連続表彰台」のイメージがまだ強い。

したがって、表面的には多くの日本人が「重友、木崎、尾崎選手はよく頑張った。感動をありがとう!」といいながらも内心「がっかり」というのが本音であろう。

85日付の時事通信の報道では、レースを観戦した高橋尚子さんは、日本勢惨敗の結果に「やはり自信を持ってスタートラインに立てるかどうかが大きいと実感した」、「ここ(五輪)に来るまでに自信をつけてもらいたい。あくまで私の意見だが、スピード(強化)に重点を置いて、練習量が少なくなったと思う。(アテネ五輪金メダリストの)野口さんタイプの選手が少なくなったのかな」と話したという。(※時事通信の記事より引用)

確かに、ここ数年、急激に、「夏場のレースといえども冬のレースのように高速レース」にマラソンもなってしまった。

それに対抗すべく、日本選手はスピード強化に力を入れている。

しかし、マラソンのトレーニングをしている人なら分かる話であるが「スピード練習」に力を入れると、「走り込みの総距離」は当然短くなる。

今回のレースを見ていると、3位になったロシア選手は、今回出した2時間23分台の記録がベストタイム。

要は、ベストタイムが2時間25分程度の選手でも十分に表彰台に食い込めるのだ。

そう考えると、日本人選手も全然問題ない。

また、「高速レース」といっても冬のレースのように「2時間20分を切るレース」ではない。

つまり、「中途半端なスピード強化」をはかるよりも、「スタミナ強化」「ゆさぶりによるスピード変化に耐えられる走り」「主導権を握るレース運び」といった点を強化することの方がよい結果に繋がったのではないだろうか。

そう考えると、「2回目のマラソンではあったが選考レースでタイムと順位(優勝)的に選ばれた重友選手」は五輪代表として適切だったのだろうか?と考えると微妙である。

つまり「マラソンレースに対する経験不足」なのだ。

前回の北京では、野口選手が棄権、土佐選手が脚の故障で途中棄権だったので唯一の完走者となった中村選手も期待されていた割には、結果が出なかった。

中村選手も、確か、五輪がマラソンレース2回目だった。

結果から意見するのは潔くないが、そう考えると、選考会では負けてしまったが、去年の世界陸上で5位に入賞した赤羽選手の方が「マラソンレースの経験と対処」という点ではよかったのかもしれない。

またウルトラCとしては、選考レースから五輪までの伸びシロ(回復シロ)を考慮すれば、野口みずき選手を代表に選ぶという選択肢もあった気がする。

今回は、初の試みで事前合宿を「チームジャパン」として実施した。

この取り組み自体は、「チームジャパンとしてよい結果を出す」という点で考えれば、いいことだろう。

しかし、今回のロンドン五輪のレースで正直、3人が協力し合ってレースを展開したようには見えなかった。

また、間違った方向性でトレーニングを積めば、「みんなで首を揃えて惨敗」という結果は見えていた。

いままでは「カラーの違った3選手を選抜」して、レース展開にともなうリスク回避をしてきたと思うが、「チームジャパン構想」は、下手をすると「タイプの同じ選手を作りゼロか100か」の賭けになってしまった気もする。

まだ男子マラソンはあるが、陸連は「2大会連続での入賞者なし」を真摯に受け止めて、問題点を追及し、対策を取るべきであろう。