NASA(アメリカ航空宇宙局)が行っていることといえば、私たちが思い浮かべることは「スペースシャトルと宇宙ステーションの運用」である。
宇宙においては、当然、「いろいろな不具合」が発生してきた。
コンピュータの故障、予備系姿勢制御装置の故障、通信装置の故障・・・等、こうした「異常事態」が発生すると、設備上のトラブルだけでなく、宇宙飛行士の生命の危機にも直結する。
そのため、NASAの運用部門(MOD:Mission Operations Directorate)では、こうした異常事態発生時に、冷静、かつ、適切な判断能力と指示が求められる。
こうした「その場その場の状況に応じた判断」というのは、マニュアルにしにくい。
なぜならば、基本的なトラブル対策はマニュアル化できても、個々のトラブルに対しては、「その場の状況がさまざま」であることから、結果として、「基本的トラブル解決方法」+「その場の状況に応じた解決方法」が求められるからだ。
だからといって「異常事態に対する対応」を担当者任せにしていては、組織としての経験の積み重ねが無いといってもよく、「歴史から学ぶ技術の蓄積」という進歩・成長がみられなくなる。
つまり、こうした「状況判断」が求められる場合は、
◇マニュアル化可能な『基本的トラブル解決方法』
◇プラス『その場の状況に応じた仕事に対する姿勢』
を業務手順として頭とからだに叩き込んでおく必要があるのだ。
ちなみに、NASAでは、運用部門を代表する有名な人物である「ジーン・クランツ」が残した「仕事に対する姿勢10ヶ条」(下記参照)が『その場その場の状況判断をする上での基本姿勢』として受け継がれているという。
【仕事に対する姿勢10ヶ条】
1. Be Proactive .
(先を見越してうごけ)
2. Take Responsibility
3. Play Flat-out
(きれいになるまでやりとうせ)
4. Ask Questions
(不確実なものはその場で質問をして把握せよ)
5. Test and Validate All Assumption
(考えられることはすべて試し、確認せよ)
6. Write it Down
(連絡も記録
もすべて書きだせ)
(ミス
を隠すな、仲間の教訓にもなる)
8. Know your system thoroughly
(システム
全体を掌握せよ)
9. Think ahead
(常に、先を意識
せよ)
10. Respect your Teammates
(仲間を尊重し、信頼せよ)
どれも「うーんなるほど」である。
特に「ミスを隠すな、仲間の教訓になる」は、多くの組織にも適用できる。
「仕事のミスが組織全体として少ない組織」は「ミスを出した人は能力が劣った人」という見方をしない。
つまり「ミス情報」を「ミスを出した個人」の頭の中に眠らせること無く「吐き出させる体質」が出来上がっているのだ。
こうすることで、組織全体で「ミス情報を共有化」することができ「組織として再発防止手順」が確立する。
だから、結果として組織全体として同様のミスが減り、「持続可能な成長し続ける組織」となるのだ。
「失敗した個人だけが次は気をつけよう」と自己納得するだけでは、組織マネジメントとしては不十分なのである。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ287号より)