2012年7月1日から、ついに「牛の生レバー(肝臓)」が飲食店で正式に食べられなくなる。
個人的な感情としては、残念でならない。
「禁止」となる背景は、2011年4月の「焼肉酒家えびす」における集団食中毒事件をきっかけで、その後、牛の生レバーの安全性が検証・検討されてきた。
そして、2012年6月12日に開催された「厚生労働省 薬事・食品衛生審議会の分科会」は「生で安全に食べるための有効な対策が見いだせていない」として、食品衛生法で禁じる決定をしたのだ。
この結果、
◇食品衛生法で規格基準を設定する
◇違反した飲食店には自治体が行政指導を行う
◇悪質な飲食店には「2年以下の懲役か200万円以下の罰金」を科すことができる
◇「牛の生レバー」に対して殺菌など安全に食べるための対策が見つかれば解除を検討する
となったのだ。
ちなみに、食品衛生法で規定される「規格基準」は、
(1)牛の肝臓を生食用として販売してはならない
(2)牛の肝臓を使用して食品を製造、加工または調理する場合は、中心部を63度で30分間加熱するか、同等以上の殺菌効果のある加熱殺菌が必要
となるらしい。
「えびす」の集団食中毒事件後、当初は、
◇えびすの店内における衛生管理がずさんだった
◇えびすに提供している「肉の卸会社」の衛生管理がずさんだった
と「生食用牛肉の管理上の問題」という方向だった。
つまり「管理さえきちんと実施」すれば、食品衛生法など法規での取り締まりや罰則の強化にならない感じがした。
しかし、その風向きが変わったのは、その後の調査・研究で「牛の肝臓内部から重い食中毒を起こす腸管出血性大腸菌O157が見つかった」ことが原因だ。
つまり「生で食べる牛肉のレバーを適切に加工・提供管理」したところで「そもそも牛の肝臓にはO157が存在している」ということであれば、国民の健康を守るためには「生で食べるのは禁止」とするしかない、ということなのだろう。
この流れで考えれば食品衛生法での取り締まり強化は「やむを得ない措置」である。
「食中毒」について「おさらい」をすると、食中毒の種類には「細菌性」(O157、サルモネラなど)と「ウイルス性」(ノロウイルスなど)、「自然毒」(毒キノコ、ふぐ毒など)、「化学毒」(カドミウム、水銀、PCBなど)がある。
「細菌性」「ウイルス性」は、基本的には「加熱処理」をすれば問題ないらしい。
しかし「生」で食べるとなると、食材の加工・調理・保存過程での衛生問題であれば、防ぐことができるが、「牛の肝臓内部にO157が存在する」となれば、もうどうしようもなく、「生食禁止」しかない。
ただ「牛の肝臓内部にO157が存在する確率」はどの程度なのだろう?と思う。
その理由は、「えびすの食中毒事件」が発生するまで、多くの国民が「ユッケや生レバー」をパクパク食べていたのに、食中毒での死亡事故は殆ど発生していない。
また、実数ではないのかもしれないが、厚労省のデータでは、これまで牛の生レバーによる食中毒もほとんど発生例がない。
だから「すべての牛の肝臓内部にO157が存在している」とはとても思えないのだ。
仮に「すべての牛の肝臓内部にO157が存在するわけではない」ということになるならば、「なぜ牛だけ生食で食べるのがダメなの?」である。
変な話、食中毒の代表格ともいえる「牡蠣」は、確率的に「牡蠣の中腸腺に蓄積されたウイルス性の菌」が必ずいるそうだ。
だから、加工・調理過程で牡蠣が適切な衛生管理されていたとしても、そもそも「牡蠣内部に菌がもともといる」わけで、たくさん食べれば「いつか(菌入り牡蠣に)あたる」わけだ。
しかし、「生牡蠣」については、今のところ、特に規制がない。
牛の生肉を食べ、お亡くなりになっている方もいるので、言葉は慎重に選びたいが、牡蠣の例ではないが「リスクゼロ」の食品は殆どないと思う。
「牛の肝臓内部にO157が存在する確率」が仮に「10,000頭で1頭」あるいは「1,000頭で1頭」だったらどうなるのだろう?
この場合、おそらく「牡蠣がウイルス性の菌を保有する確率」よりかなり低いはずだ。
しかし「生牡蠣禁止」の議論は出てこない。
したがって、誤解を恐れずに言えば「生の牛レバー」について、「リスクゼロ」を追求することよりも「食中毒になる危険性」(例えば牛が菌を保有する確率や子供やお年寄りなど抵抗力が弱い人が食べた場合の危険性など)を国民に知らせる仕組み」を強化することが先決であって「リスクゼロにするために国が法律でガチガチにしばるものではない」と私は思う。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ286号より)