2012226日に開催された「ロンドン五輪男子マラソン代表選考」を兼ねた東京マラソンでは「プロ市民ランナー」こと「藤原新選手」が2時間748秒で2位に入り、ほぼ、代表入りを確実にした。

藤原選手の特徴は、なんといっても、「現在、実業団に属していない事」である。

「実業団に属していない一流マラソンランナー」といえば、2012年の東京マラソンでは低迷してしまった埼玉県職員の川内優輝選手と一緒である。

川内選手の場合は、学習院大学卒業後、実業団への就職は選ばずに、埼玉県の職員になり、出勤前後の時間を使って仕事をしながら、トレーニングをしている。

藤原選手の場合は、拓殖大学を卒業後、実業団のJR東日本に入ったが、その後、自分が目指す練習環境を求めて「プロランナー」となった。

しかし、スポンサーからの契約打ち切りがあり、現在は、「無職」状態。

つまり、貯金を切り崩し、実家に戻っている奥さまからの生活支援を受けて、荒川河川敷を練習場にして、トレーニングを積んでいる。

また、藤原選手は、公務員ランナーの川内選手に刺激を受けて「練習でも試合並みの負荷を掛ける川内流」を取り入れて、1キロ258秒ペースでトレーニングを積んできたそうだ。

実業団所属の選手というと、女子選手でいえば、2004年のアテネで金メダルを獲得した野口みずき選手のように「マラソン」を中心とした競技を続けられればいい。

しかし、通常は、実業団所属のランナーは「企業の広告塔」としての役割があるから「マラソン以外の駅伝」などに対応した練習をすることになる。

また、マラソンは「好不調の波」が大きいから、実業団の所属選手として生き残るためには「1万メートル」や「駅伝」でコンスタントに実績を残していく必要がある。

そうなると「マラソンを第一優先」に考えた練習だけをするわけにはいかないのだろう。

したがって、藤原選手の強さは、川内選手もそうであるが、やはり「追い込まれた環境下」にあるからこそ、強いのかもしれない。

それにしても、下馬評では、川内選手ばかりが注目された東京マラソンであったが、藤原選手は、川内選手同様、201225日に香川県丸亀市で開催された「第66回香川・丸亀国際ハーフマラソン」を走って、1時間134秒の自己新のタイムで、総合6位、日本人選手としては第2位に入り、好調だった。

また、2008年の東京マラソンでも、2時間840秒で2位に入って北京五輪では補欠になっている。

藤原選手について「面白いな」と感じたのは、第2集団から飛び出した時に他の日本人選手に「第1集団をおっかけようぜ!」とばかりにあおったポーズである。

このような、一見、挑発的な態度は、かつての名ランナーで2度の五輪出場経験がある「中山竹通選手」を彷彿させる。

川内選手は「(2時間)6分、7分台を出さなければ五輪に出るだけで意味がない」といい、藤原選手は「五輪を目指さなければ競技者でない」と公言している。

「日本男子マラソンが強かった時代の復活」を望むファンとしては、なんとも頼もしい。

来週(34日開催)のびわ湖毎日マラソンでは、世界陸上7位の旭化成の堀端選手や中国電力の佐藤敦之選手、そして福岡国際からのリベンジを狙う今井正人選手が出場する。

川内選手が予言する通り、藤原選手の結果に刺激を受けて6分台や7分台の選手が出てきて欲しいと思う。