箱根駅伝予選会を1位通過した岡田正裕拓大監督

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【監督でチームが変わった】といえば、ザッケローニ氏が代表監督に就任したサッカーの「ザックジャパン」であろう。
ザッケローニ氏は、10月に開催されたアルゼンチン戦と韓国戦の2試合の親善試合を終えて、日本人選手に対する「プレーの質の高さと戦術吸収力の高さ」を「確信を持った点」として挙げ、実際、短期間で細かな約束事をチームに植え付けた。
具体的には、「攻撃では縦への意識を徹底」と「守備では全体をコンパクトにした上でサイドに追い込んで奪う」という2点だ。

そして、これらの特徴から逆に、日本人選手のマイナス面の特徴として「試合の流れを読み、状況に応じた戦術を用いること」に欠けていると分析をしている。
つまり、言われたことは愚直にこなせるが、「状況に応じた」創造性、柔軟性が弱いということだ。
名将と呼ばれる監督は、「いい点、悪い点」を的確に分析し、そのよい能力を素早く引き出し、欠点は徐々に改善していくプランが立てられる人なのだろう。

大学の陸上長距離走の世界で名将のひとりと言えるのは、2010年3月に拓殖大学の監督に就任した岡田正裕監督であろう。
10月16日に開かれた第87回箱根駅伝の予選会では、伝統校と言われる大東文化大や順天堂大が本戦出場を逃す中、予選を1位通過し、2年ぶりの本戦出場（昨年の予選会は14位で敗退）を決めた。

岡田監督が、監督として注目されたのは、九州の実業団チームであるニコニコドーを指導して、1988年ソウル五輪女子1万メートル代表の松野明美選手を育てたことだ。
また、1999年には母校の亜細亜大学の監督に就任して、2006年の箱根駅伝で初優勝に導いた。

岡田監督の指導の特徴は、理にかなった猛練習で選手に「やれる」という自信をつけさせる点が挙げられるだろう。
現に、今年の拓大の夏合宿（阿蘇）では、「1日約40キロ」「21日間で計820キロ」の走り込みを全員が脱落することなく走らせたという。
また、単に長距離を走るのではなく、前年度の優勝チームのタイムを目標に、5キロ毎にペースをアップダウンさせるラップタイムを明確に指示した練習を徹底する。
そして、選手と寝食を供にして、精神的にも学生に「ボス」と呼ばれるぐらい懐に入り込む。

ただ、敢えて、岡田監督のネックを過去の経歴から上げると、「経営陣との衝突」かもしれない。
亜細亜大監督の時は、優勝した翌年に契約満了を理由に解任されているし、2008年に就任した九州電工女子部監督は、指導方針の違いから2年で解任されている。
ちなみに、今回、その亜細亜大は予選会で拓大とは対照的に敗退した。

拓殖大学長距離競走部の今後を占うと、岡田監督の指導方針を真に理解し、その方針による指導をのびのびとできる環境を組織が作ることが、「名将の能力を最大限に引き出す」ポイントなのかもしれない。