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2010年1月22日付の各メディアの報道によると、足利事件で無罪が確定的になっている菅家利和さんの取り調べを担当した森川大司元検事が再審第5回公判に出廷したが、菅家さんに対して「大変深刻に受け止めている」「申し上げた通りです」と述べたのみで、謝罪の言葉はなかったという。

ニュース記事から、森川元検事が菅家さんの取り調べを行った1992年12月の状況を整理すると、
1)12月7日に取り調べをした森川元検事に対して菅家さんは自白を撤回
2)12月8日に森川元検事は捜査段階のDNA型鑑定の結果を持ち出して菅家さんを追及
3)12月8日に菅家さんに再度「自白の供述」を認めさせた
と言う流れである。

森川元検事は、出廷した再審第5回公判の中で、
・12月7日の取り調べは、「別の女児殺害2事件(未解決)を調べるのが主目的だった」
・菅家さんが「足利事件で否認するとはまったく予想していなかった」
・12月8日の取り調べは、「前日の否認は罪を免れるための虚偽供述と思ったので、ただすためだった」
・当時のDNA型鑑定の精度について「足利市だけでも約50人が一致する」という知識はあった
と証言している。

このことから、当時の森川元検事の取り調べ時の状況は、
・菅家さんは罪を逃れるためにウソをついていると思い込んでいる
・未解決の女児殺害2事件についても菅家さんが関与していると思い込んでいる
・警察の取り調べに基づき検察側が構築したストーリーは間違いないものだと思い込んでいる
と言うことが想像できる。

森川元検事は、これらの「思い込み」が先行した取り調べをしているから「当時のDNA鑑定の精度の不確かさ」という「科学的根拠のあいまいさ=犯人と誤認するリスク」があるにもかかわらず『自己肯定他者否定』という「ゼロベース思考」が客観的な判断ができなかったのだろう。

一度、検察側が作り上げたストーリーについて、
「検察がミスジャッジをするわけにはいかない」
「検察の我々が想像しているストーリーに誤りはない」
といった変なプライドを捨てることができたなら、
・菅家さんは気が弱いタイプだから警察の取り調べで思わず認めてしまったのかもしれない
・菅家さんが「やっていない」というわけだからDNA鑑定の精度も考慮すると「絶対的な科学的裏付けとはいえない」かもしれない
と捉える事ができたと思う。

要は、こういった判断を邪魔した要因は、
「検察官としてのプライド」と「想像力欠如」
に違いない。
ただ、難関の司法試験を突破してきて、捜査・起訴権限を持つ検察という公権力がある立場の人に「変なプライドを捨てましょう!」といっても、どだい無理だ。
また、いわゆる「頭のいい人ばかりの中で生きてきた人」には「世の中にはいろいろなものの捉え方や価値判断をする人が存在する」ということ理屈では分かっても、「想像力を発揮して理解することは容易ではない」だろう。

つまり、「取り調べの可視化」は、容疑者、被疑者の人権や権利を守るだけではなく、その事件の当事者以外の検察側や第三者がビデオや録音を確認することで「この取り調べは前提となる判断が偏っていて適正とはいえない」などチェックする機能を持つこともできるのだと思う。

それにしても、メディアでは「取り調べを担当した森川元検事が菅家さんに対して謝罪の弁を述べていない」と、どちらかというと「非難する立場」で報道しており、私も、少なくとも「当時の検察側に瑕疵があったかどうか」と言うことの言及は出来ないものの「人間として申しわけございませんでした」という菅家さんに対しての謝罪はすべきだと思っている。

しかし、この件について、公務員の知人たちと話していると「森川元検事は謝罪する必要がない」という意見が案外多い。
私が、「例えば“刑事訴訟法上や当時のDNA鑑定の精度を鑑みれば、検察の手続きに瑕疵があったわけではないが、結果論として間違った判断をしてしまったことは、申しわけなかった”というような言い方でもいいから謝罪は必要じゃないの?」と言っても、「菅家さんが警察の取り調べで自白するからいけないんだ。自白さえしなければ、混乱することはなかった」とあくまでも「検察側に落ち度はないから謝る必要はない」という考えなのだ。

雑談の席なので、私も、これ以上、自説を主張する状況ではなかったが、「自白をせざるを得ない状況が現在の取り調べにはある」ということが想像出来ないことが、そう考える一番の原因で、もう一つは「お上が謝罪することは権威を失墜する」という妙なプライドがその次の原因なんだろうな、と思った。

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