「保険設計書内容の記載内容の誤りと差額のお支払いについて」
というタイトルのA4用紙1枚のコメントを発表した。
そのコメントによると、
1)対象となる保険は、平成7年4月2日~平成8年4月1日に販売した定期保険特約付き終身保険「大樹ニューTOP」
2)約款では「手術1回につき入院給付日額の一律20倍相当」を給付すると表示されているが、設計書では「最高で40倍相当」と表示していた
3)子宮筋腫による子宮全摘出手術で、手術給付金をすでに受け取った契約は375件
4)3)の手術に係る手術給付金の請求がなされていない現在継続中の契約は4357件
5)給付をすでに実施した375件については差額を支払う
6)継続中の4357件の契約についても、該当するケースが発生した場合は、誤っていた表示内容通りの「40倍相当」を支払う
という。
つまり、「保険会社として企画した商品の給付金額」と「お客さまと設計書でお約束した給付金額」が異なっていたわけである。
三井生命保険が発表したコメントでは、「誤表記が生じた原因」を、
「平成7年当時において、保険設計書の作成過程における検証と審査態勢が整備されていなかったため」
と説明している。
そして、現在においては、
・募集資料(保険設計書やパンフレットなど)の作成部署による検証態勢
・複数の審査部署におけるリーガルチェック態勢
・約款記載内容との整合性チェック行う検証態勢
が整備されていることより、「適切な保険商品の表示を行っている」と説明している。
つまり、
「平成7年当時はずさんな検証態勢であったが、現在は、検証態勢が充実しており、基本的に問題は発生していないし、今後も発生しないはず」
と言い切って「現状、この件に関する再発防止は必要ない」と評価しているのだ。
(※“引き続き、再発防止について万全を期す”という抽象的総論はコメント文書で一応述べているが、具体的な取り組みが不明確だし、精神論に受け取れる)
このコメント内容について、仮に採点すると、「70点」、つまり「ギリギリ及第点」という感じがする。
その理由は、
1)少なくとも平成7年以前、あるいは、三井生命保険が「検証態勢が充実した」と位置づける年月日以前に「企画して発売している保険商品の募集資料(設計書等)」は、自社として「確実に問題ありません」という検証を実施しているのか不明
2)今回の指摘は、契約者(お客さま)からの指摘であるが、「給付金支払い時に自社でその金額の募集資料との整合性をチェックできる態勢」について、当時の状況と現状の態勢との違いなどについて説明がなされていない。
からである。
発表されたコメントは、
1.誤りが判明した保険設計書の概要
2.該当するご契約とお客さまへの対応
3.発生原因と再発防止の取組
という構成で文章がまとめられている。
つまり、
1.→発生した問題の特定
2.→発生した問題に対する修正
3.→発生した問題の原因と同様の問題に対する再発防止
が述べられている。
しかし、
・問題発生原因を募集資料作成段階のみと位置付けている点
・募集資料作成段階で不備があった場合、それ以降の業務プロセスで、自社において不備を検出できる仕組みについての説明がない点
については、少々「説明が十分ではない」と分析できる。
三井生命保険の肩を持つなら、おそらく、私が上記で分析したような点についても、「それなりに考慮したなんらかの対応」をしていると思う。
また、「A4用紙1枚でコメント文書をシンプルにまとめる」という命題があったとすれば、この程度の説明しかできないのかもしれない。
ただ、保険会社の特性からして、この「コメント文書」自体は、おそらく、「法務コンプライアンス部門」「品質保証部門(お客さまサービス部門)」「広報部門」など複数の部門におけるチェックを受けているはずである。
しかし、「もうちょっと説明精度を上げるためのコメント文書作成プロセスの工夫(改善の余地)はあったのではないか」と思えるのである。
【三井生命保険が発表したコメント文書】
http://www.mitsui-seimei.co.jp/corporate/news/pdf/20090623.pdf
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