目的意識的（復刻版）

私は、若い頃、武道家の方に、身体の鍛え方について教わった。
スポーツ選手が、その競技スポーツにおいて役目を果たす筋肉を創り上げるためには「何のために、どこの筋肉を、どのような役割のために、どのぐらい鍛えるのか、を意識的に取り組まなければ、その競技で使える肉体にはならないんだよ」と。

つまり、「腕力が足りない」からといって、バーベルを反復して持ち上げて筋骨隆々の筋肉を作りあげても、「持久力が足りない」からといって、むやみに走りこみを繰り返しても「単にそれらの身体部位を測定する数値は上がるが、競技力の向上とは必ずしも一致しない」と言うのだ。

確かにそうだ。
その肉体が身体機能と統括されない限り、目的とした動きはしない。
肉体が大きな勝敗の要素を支配しそうな競技でも、図体が単に大きいだけの「木偶の坊」では、勝てない。
筋肉の優劣だけが競技の結果を左右するのであれば、競技スポーツは面白くないし、見ているものの感動も半減する。

話は若干変わるが、やせっぽちの少年が空手を鍛えて優勝してしまう映画「ベストキッド」でも、男子シンクロナイズドスイミングブームを作った「ウォーターボーイズ」でも、それぞれ、「壁のペンキ塗りや車磨のワックス掛け」や「水族館の清掃」で対象となる競技に類似した筋力の動きをペンキ塗りや清掃をすることによって自然と鍛えられていくシーンがある。
自然と鍛えられた肉体によって、競技に役立てて活躍するのだ。

武道家の先生の話で考えれば、基礎体力の鍛錬には、退屈な反復練習を繰り返すよりも「人目につく部分の掃除を手を抜かずに終わらせなければならない」と言う目的があるだけに行動には身が入るからいいかもしれない。
しかし、その練習だけでは「競技に必要な肉体」は作られない、と言うことになる。

勉強もそうかもしれない。
もちろん、「読み書き計算」と言われるような基礎的な学習は、「子供の学習に都合のいいアメを与えて闇雲に反復練習する」必要があるかもしれないが、物心がついてからの学習になればなるほど「何のために勉強するのか」、「何に役立つのか」がわからないと身が入らない。
「いい会社に入るために、いい学校に入るために」と言う目的では、目的を達成した後の日常行動としての習慣にならない。

仕事に関してもそうかもしれない。
「売り上げ増」や「組織の認証取得」などの目的は、方向性は一致するが「魂はバラバラ、もしくは入っていない」と言うことが多いのではないか。
「顧客や利害関係者の要求事項やニーズや期待」にあった「目的」を定めて「目的意識的な継続的な活動」が各自の役割として習慣化して行えるように管理（マネジメント）しなければいけないのだろう。

つまり、「頭の回転の早い人」、「学歴が高い人」、「人脈のある人」、「積極性のある人」、「リーダーシップが取れる人」、「優れた技能を持っている人」などと言った「ビジネス上の能力の高い人」を仮にたくさん集めても組織の目的は達成されない、といえるのかもしれない。

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