栃木県足利市で1990年5月12日に4歳女児が殺害された「足利事件」で、無期懲役が確定し服役中の菅家利和受刑者を1991年12月2日の逮捕から約17年半ぶりに釈放した。

刑が確定した受刑者がされる根拠は、刑事訴訟法442条で、
「検察官は再審請求があった場合、裁判所の再審開始の可否決定前に刑を執行停止できる」
という規定である。
ニュースでは、「裁判所が再審開始決定前に検察が受刑者を釈放したことははじめて」だというから、検察側としても、
・裁判所の再審開始が決定的になった
・当時のDNA鑑定や取り調べ過程に問題点があった
・足利事件に対する世論の関心の高まり
などを考慮した決定なのだろう。

また、最高検察庁は「旧式のDNA鑑定を実施した証拠品については、再審請求に備えて保管するよう全国の地方検察庁に指示する方針」というから、「今後、鑑定精度の高い最新式のDNA鑑定結果によっては足利事件のように鑑定結果が覆る可能性がある」ことを認識しての予防処置策を取ったということだろう。

それにしても、千葉刑務所から釈放されて記者会見する菅家さんを見て、「本当にお気の毒な話だ。失われた月日が無念でならないだろう」と思う。
取り調べや裁判の経緯の詳細は、よく調べていないのでわからないが、
・警察や検察の取り調べ時に菅家さんが自白してしまった
(第一審の途中で自白を否認しているが、厳しい取り調べに耐えられず自白したという)
・女児の下着に付着していた体液のDNA型と、菅家さんのDNA型が一致した
ことが、この裁判における判決の決定打になっていることは確かだ。

私の記憶では、1990年ごろは「DNA鑑定」の黎明期であった。
その当時、「DNAが一致する可能性は数百億分の1」であるから、したがって「DNAは唯一無二の証拠となる」という「医学的根拠」がよく説明されていたように思う。
そして、2000年7月には最高裁判所が「DNA鑑定結果は証拠能力がある」というお墨付きを与える判決結果を出している。
しかし、結果論ではあるが、「DNA鑑定精度の妥当性」については十分でなかったわけだ。

「冤罪」を防止するために「捜査当局の取り調べ過程を録音・録画する“可視化”」の議論が高まっている。
ただ、この「可視化」で減らすことができるのは「強引な自白の強要」である。
「足利事件」では「自白と旧式DNA鑑定」が裁判所(裁判官)の判断に最後まで大きく影響したのだ。
つまり、
・科学的新手法を捜査に取り入れる場合の新手法の妥当性確認の仕組み
・警察・検察の鑑定結果に異議がある場合の再鑑定の仕組み
なども整備しなければ「可視化」だけでは冤罪を無くすことはできないだろう。

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