2009年3月30日に、2006年7月31日に発生した「ふじみ野市営プール女子児童死亡事故」の控訴審判決が東京高等裁判所から出された。
結果は「控訴棄却」。
つまり、業務上過失致死罪に問われた元同市体育課管理係長河原孝史被告に対して、
「他の者にも責任があるからといって、河原被告の過失責任が小さくなるいわれはない」
と市や委託業者のずさんな管理を改めて断罪し、弁護側が求めていた「罰金刑」は退けられたのだ。

この判決で興味深かったのは、裁判長が指摘した内容である。
(2009年3月31日付の東京新聞から要約)
判決を言い渡した東京高等裁判所の中山隆夫裁判長は、
≪事故原因≫
「プール管理業者のずさんさなどさまざまな要因が複合的に絡み合った」
≪河原被告の責任≫
「河原被告にプール事務の経験がなく、研修も受けていない『素人』であったとしても、確認さえしていれば吸水口などを点検することは十分できた」
「被告自身が、自らを『素人』のまま放置していた。被告らの過失が中核的な原因」
と指摘したのだ。

ポイントは、
【業務知識や経験がない“素人としての自分”を放置し自己研鑽しなかった責任は重い】
と評価したわけだ。
つまり、「仕事の責任を与えられている以上、仕事として当たり前の確認を行い、不足する力量を自分で努力して補うのは当たり前であり、それを怠ったことが事故の主因である」
との判断なのだ。

この裁判長の指摘について、
「職務に必要な力量を持ち合わせぬまま放置したことが問題」
と判断している点は、とてもよくわかる。
そして、この裁判は「刑事事件」として取り扱われているので、「罪を犯した者とその問題点が認定出来るか否か」がこの裁判としては論点であることも理解できる。

ただ、再発防止の観点を中心に考えると、
「河原被告個人に問題点の多くがあった」
とは実質的には言い切れないだろう。
1)力量のない職員への研修に関する責任
2)プール管理担当職員として人事を割り当てる責任
3)職務遂行能力(必要な力量)を確認する責任
4)プール管理担当業務に対する業務手順作成の責任
などについても「改善の余地は大いにある」と思う。

判決について、ふじみ野市の島田行雄市長は、
「あらためて重大かつ深刻にとらえ、市への猛省を促したものと考えている」
とコメントしたという。
この事故に関する責任は司直の判決に従うしかないが、再発防止の観点からは、
「担当者個人の過失」だけでなく「組織(市)として何が足りなかったのか?」
を十分に検証して真の是正処置、改善をしていってほしいと思う。

≪関連ブログ≫
「ロジカル・コミュニケーションの“気づき”ブログ」
ふじみ野市大井プールの小学生死亡事故には数々の問題があった(2006.8.4)
http://blog.logcom.jp/?search=%B8%CD%B4%DD
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ118号より)

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