アンケート結果を分析するする時に注意する点がある。
ひとつは、「事実」なのか「感覚」なのか、もうひとつは「組織の方針に沿った製品やサービスを提供していたのか否か」である。

まず、前者の「事実か感覚か」についてであるが、例えば、飲食店のアンケート結果で、
「飲み物がまずかった」
という回答があった場合、これは「感覚」である。
つまり、この場合はもう少し具体的に「飲み物が適温でなかった」「炭酸の気が抜けていた」「ジュースが水っぽかった」など「まずいと感じた事実」を調べなければ「まずかった」と感じた人を「うまい」に変えることはできない。

よく、アンケートの場合、回答者の手間ヒマを省くために、例えば、
「飲み物について:よい・ふつう・悪い 該当するものに○印を記入ください」
というような形式があるが、この場合、調査する側はこのアンケート結果をどうしたいのだろう?と思う。
ここから導き出される結果は、せいぜい、「感覚として、飲み物についてよい印象を持った人や可もなく不可もなくの人、あるいは悪い印象を持った人の割合がわかるだけ」である。
その割合がわかったところで、効果的な改善策を立てるには情報として不足しているから「何をしたいの?」と思ってしまうのだ。

したがって、アンケート結果を取りまとめ、分析する時は「事実か感覚的な回答」を整理する必要がある。
もちろん、その前にアンケートの回答が具体的になるよう質問方法などアンケートの書式を工夫する必要がある。

次に「組織の方針に沿った製品やサービスを提供していたのか否か」の件であるが、これも案外見落として評価しがちだ。
例えば、組織の方針として「言葉遣いや態度など躾に厳しい熱血指導、スパルタ」を売りにした学習塾があるとする。
ここで生徒にアンケートを取ったら「A先生の授業は、よいが10%、ふつうが20%、悪いが70%」だったとする。
その結果を、学習塾の管理者が見てA先生に「生徒からのアンケート結果が悪いので気を付けるように!」と注意した場合、この管理者の評価と注意は妥当なのか否か?

結果からいえば、
「管理者の評価は結果としては妥当かもしれないが、評価プロセスは問題がある。したがって、単に注意をしたことは何の意味もない」
である。

まず、この場合、「よい理由」も「わるい理由」も分析されていないので、A先生に対して学習塾の管理者は正当な評価はできないのである。
仮に、悪い理由について「事実」を調べると「厳しい」「口うるさい」「細かい」などだったとした場合、次に管理者は分析・評価するために何をすべきか?
それは、「A先生が組織の方針に沿った指導をしていたのか否か」である。
生徒の評価である「厳しい」「口うるさい」「細かい」は生徒にとっての感覚であり、「組織が目指した教育方針通りの指導をA先生が実施した結果」であれば、A先生には、基本的に落ち度はないと考えていい。

アンケート結果の表面的な集計から「顧客の評価結果優位」になり過ぎるとロクなことはない。
例えば、NHKは公共放送であるから、個人的には視聴率や視聴者の声にすべてこだわらなくていいと思っている。
しかし、表面的に「視聴率が振るわない」「もっと娯楽番組を増やしてほしい」という結果から、「視聴率が高くなる傾向の番組や娯楽番組を増やす」としたら「NHKの目的や存在意義から少し離れていく」と思う。
政治でいえば、誤った「顧客(国民)満足」は「衆愚政治」になってしまうのと一緒である。

以上のように、アンケート結果の分析・評価には注意すべき点がある。
「顧客重視」「顧客満足」は優先されるべき事項ではあるが、「自らの組織の目的や存在意義」を大きく歪めた方向に向かった対策になっていないか、アンケート結果を分析・評価する時は注意が必要なのである。

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