「不思議な言い回し」と表現したが、「不思議」に感じるのは一般人であって、審査員やマネジメントコンサルタントにとっては「当たり前」なのである。
不思議な言い回しの例としては、たとえば、次のような監査員が監査の終了後に述べる講評がある。
『貴社のマネジメントシステムには不適合はありませんでした。しかし、マネジメントシステムが素晴らしく、また、適切であるとはいえない部分も散見されました』
一般的には「不適合じゃないのに、適切ではないってどういうこと??。しかし、”即刻直しなさい”と言われた項目はないんだから、まっ、いっか。」と考えるのが普通であろう。
しかし、「監査」に対して多くの人に誤解があるのが「決められたルールがその通り実行されているかどうかをチェックするのが監査だ」と考えている点です。
この前提に立てば、
「不適合がない」→「決められたルール通り実行されていた」
ですから
「マネジメントシステムが適切でない部分が散見された」→「???」
と監査員が表現すれば、意味不明に陥るのは、無理もありません。
ただ実際には「決められたルール通りに実行されていること自体が適切でない懸念がある」というケースは多く存在します。
たとえば、従業員20人のオフィスワーク主体の会社なのに、文書の発行・配付管理のルールが、従業員1000人以上の規模の会社と同等のレベルでルール作りされているとします。
そこで20人の会社の文書管理について監査してみると、ルール通りに実行されている。
その場合は、「不適合はありませんが、マネジメントシステムが(貴社の業務実態に適したルールと言えるかどうか)適切でないと思われる点がありました」という表現になる。
つまりマネジメントシステム監査には「ルール(仕組み)順守性」の部分と「ルール適切性」の部分がある。
ISOマネジメント規格をはじめとして、多くのマネジメントシステムの要求事項はすべての組織が適用できるように汎用性を持たせた要求事項になっているので、抽象的な表現が多い。
つまり「適切性の部分」は「適合か不適合か」という「アウトかセーフ的な判断」は基本的には監査員は、監査されている被監査側が「確かに、適切なルールの決め方でないし、現状業務に見合ったルールで業務が実行されているとはいえないですね」と認識しない限り「不適合という指摘」はしにくい。
わかりやすい例でいえば、自治体での監査。
自治体での監査に行くと、国が決めたルールに沿って実施する業務が多く、職員は「法律の定めによって、これこれをこのように実施しました」と説明される。
彼らの立場で考えると
「ルールの実行に関する順守性は担保されている」→「マネジメントシステムは適合」
である。
しかし、私が「素人目には、少なくない件数の住民からの苦情や要望が上がっているようですが、法律の手続きとは関係なく改善できる仕事の改善として何がありますか?」と質問すると目を白黒させている。
要はこのようなケースでは、
「マネジメントシステムに改善の余地がある」→「マネジメントシステムが不適合とは判断できませんが、適切とはいえない」
となるのだ。
「マネジメントシステム監査の結果をマネジメントシステムの改善に役立ててください」と監査員に言われてもピンと来ない人は、マネジメントシステムの監査について、
・ルール通りに実行されているかどうかの順守性をチェックされるのが監査
と思っており、
・ルールが適切か否かの観点でも監査はされる(適切性監査)が、適合or不適合の判断は監査では不能(だから、不適合ではないが適切でないというような表現になる)
とはまず、思っていないのだろう。
「マネジメントシステム監査の価値は順守性だけでなく適切性にもある」と認識しなければ、「監査の価値を理解し、監査結果を経営に役立てることはできない」のである。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ84号より)
【よかったらクリックお願いします♪】↓

ブログランキングranQ
企業家ブログ→http://www.kigyoukablog.jp/ranki.cgi?id=35