要は、日弁連は「政府案では、司法試験(裁判官、検察官、弁護士)の合格者を2010年ごろに年間3000人まで増やす計画があるが、そのペースを遅くして欲しい」というもの。
日弁連の緊急提言だけ聞けば、緊急提言内容に対して「見識を疑う」とコメントした町村官房長官のように、
・そもそも政府案に逆行しておりふざけている
・新司法試験制度がまだ始まったばかりなのに、何を言っている
・自分たちの商売の利益しか考えていない
・市民サービスの向上を低下させるエゴな意見だ
・裁判が長期化する現状より、不足している裁判官や検察官の現状を見ていない
・弁護士過疎地はまだまだたくさんある
という意見が出るのは当然だ。
しかし、現実には、日弁連の宮崎誠会長が提言したように
1)一部法科大学院で厳格な成績評価、修了認定がなされていない
(十分な知識教育が行なわれていない)
2)法科大学院のカリキュラムと合格後の司法修習の連携が不十分
(合格後の養成制度が仕組みとして確立していない)
3)法律事務所での弁護士の新規採用が従来に比べて困難な状況
(司法修習終了後の先輩弁護士からの指導・養成は重要なプロセス)
という問題が出てきているのも事実だと思う。
私は、今回の「日弁連の緊急提言に端を発した法曹増員計画や養成システム」に関する「ものごとの考え方」として、
a)「政府の法曹増員計画」だからといって、見直しを検討しなくていいものではない
(計画実行段階で問題があるのなら、どんどん見直すべき)
b)「政府の法曹増員計画」の見直し検討する方法と指標は定めていたのか
(プロセスが計画通りか否かを評価する監視指標は決めていたのか?)
という点を考えたい。
つまり、例えば、
「目標」→2010年までに合格者を3000人まで増やす
に対して、
→司法修習終了後の弁護士事務所採用数
→弁護士登録後の独立開業までの期間
→弁護士の分布状況(地域別の弁護士数、刑事・民事など進んだ分野など)
→法律家を必要とする刑事・民事の需要数(相談件数など)
→裁判の平均結審期間
→裁判官、検察官、弁護士に関する苦情内容と数
・・・
・・・
などを監視して、その傾向を分析し、「制度設計に不備はないか」「不十分な施策は発生していないか」を評価して「当初の法曹増員の見直し」を検討するべきだと思う。
例えば、司法試験合格者を増やしても、経験不足の弁護士が学ぶ場(弁護士事務所)が提供されなければ、いきなり独立開業する弁護士が多くなり、逆にサービスの質低下になるわけで、それは「計画に従って増員は達成しました」の後で考えるのでは遅いわけである。
政府案は「2010年前に年間3000人の合格者」と目標を掲げているが、「法曹界や法曹人のサービスの質」を評価できるように仕組んでおかなければ、やっていることは、「単に予算に応じて制度を計画し、実施段階に移した」だけのものになってしまう。
国や自治体の公共サービスは、とかく「計画したことを実行する」ことに猛進する。
猛進ならいいが、「妄信」や「盲信」「盲進」になってしまって「計画を達成することが目的化してしまい、本来の効果や不具合に目をふさぐ(というよりチェックしていないから見えない)」傾向がある。
マネジメントシステムの監査や指導で、国や自治体の人に接する機会があるが「プロセスが計画通りか否かはどのように判断しますか?」と問うと、たいていは「予算計画に従ってスケジュールどおり進捗しているか否かです」と回答される。
それは誤りではないが、併せて関連するプロセスの状況を監視して「目的に対する計画通りか否か」を分析・評価して必要があるのであるが、なかなかそういう指標を設定して評価されていることは少ない気がするのである。
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