経営戦略を決定し、各業務を管理するには、常に「的確なデータに基づいた事実」を把握することが重要である。なぜなら、事実をデータなしに経験と勘だけで把握して分析しようとすると、その評価は主観的になってしまうからだ。主観的になると、好き嫌いや印象の強弱で評価しがちになるので、事実をゆがめてとらえてしまう恐れがある。
 従って、事実を正確にとらえ、適切な管理や指示をするためには、的確なデータを選び定量化することが必要になる。
 わかりやすい例で言えば「長嶋勘ピュータ野球」と「野村ID野球」の違いを考えればイメージしやすい。実際のところはわからないが、長嶋茂雄氏は直感的に「こうだ」と思い込むと、ピッチャーとの対戦成績が悪いバッターでも平気で代打に送る。しかし野村克也氏はピッチャーとの対戦成績は当然のこととして、アウトカウント、守備陣、ランナーの有無など、あらゆる状況下を考慮してデータ的に成功確率の高い最善のバッターを代打に送る。
 外野で見ているぶんには、予測不能で意表をついた長嶋氏の采配の方がスリリングかもしれないが、これを企業経営に置き換えると野村氏の采配の方が一般的には賢明な采配であるし、失敗しても選択した采配について同意は得られるだろう。
 もちろん経験と勘と度胸(KKD)は、成功や失敗例の抽出、それらの原因の特定、次につながるアイデアや再発防止を検討するうえで、データだけを見ていては判断がつけづらいときに貴重な意見になる。また経験や勘や度胸は、単に定量化して客観的なデータにできていないだけで、案外事実と大きく外れていないことも多々ある。
 ただKKDに依存しすぎると、以下のような問題が発生する可能性が高い。

(1)事実を調べず、堂々巡りのまとまりのない不毛な議論が続く
(2)事実が明確に把握できないと、役職上位者やアクの強い人の意見が通ってしまいやすい
(3)データから明白な事実があっても、旧態依然の適切でない管理を採用してしまう

 事実を的確につかむためには「データの収集目的」と「目的に対するデータの正しい収集」がとても重要である。
 最近の例では、厚生労働省がタミフルの副作用について不適切な調査をした事実がある。このケースは、タミフルの異常行動を「死亡」件数で調査していた。調査の目的は「タミフル服用後の異常行動発生の有無」であるから、「死亡件数」では「正しくないデータ」を集めていることがわかる。
 タミフル服用後に異常行動が発生して、死亡したかケガで済んだかは、その異常行動の発生場所など条件によるものだ。異常行動と死亡には一切因果関係がない。
 このように、適切な意思決定や業務管理には事実をデータとして定量的に掴むことが必要であるが、データの収集目的とその目的のためにどのようなデータを収集しなければならないかを間違えると、全く意味がないことも我々は認識しないといけないのである。
(「不祥事」を止めるISO思考 光文社刊 より引用)
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ76号より)

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