「顧客重視」「後工程はお客様」「プロセス管理」「データに基づく管理」「5S」「重点志向」「PDCA」「コンプライアンス」「論理的思考」・・・などの『ISO思考』は組織の経営管理を遂行する上で重要な「ものの見方・考え方」であることは、世界の過去多くの「成功した企業」の経営管理に関する概念を分析すれば明らかである。
ISOマネジメントシステム規格は、そういった「顧客や利害関係者に信頼され、成功を収めてきた企業から導き出される経営管理の概念集」というべき存在である。

ただ、そうは言っても、ISOマネジメントシステム規格は「世界共通のルール」であるが、「根底に流れるマネジメントの思想や概念の特徴」を理解しておかなければ「あれ?」という部分が生じてしまうのもやむをえない。
たとえば、「狩猟民族」と「農耕民族」では「責任権限の明確化」と言っても、その言葉からだけだと捉える意味合いが違うだろうし、「ホワイトカラーとブルーカラー」の分化・深化し、それぞれの層の要員の力量に明らかな格差が存在する地域や業種に身をおく人と、「ブルーカラー層からの改善提案力」も業務品質向上の大きな源泉となっている地域や業種に身をおく人とでは、ISOマネジメントシステム規格の背景にある「ISO思考」の表層的概念は一緒でも、深堀りした部分では認識がそもそも違う部分は多々あるだろう。

したがって、「ISO思考を通じて業務プロセスの改善や仕事を通じての人としての成長」を目指す場合は、現状のISOマネジメントシステム規格が持つ思想や概念を理解しておくことが重要である。
「なーんだ、思想や概念が違うなら使えないじゃん」と考える必要は全く無い。
我々が「規格を活用」する段階ではそのあたりをの特徴を適宜、調節して考えればいいだけのことである。

現状のISOマネジメントシステム規格では、たとえば、以下のような概念があるものと思われる。
1)顧客のニーズや期待、真の要望と言った「製品(サービス)競争力に関する」部分にまでは言及していない
2)製品(サービス)を提供する上で明確な「計画・実施・検証」の実証が重視されている
3)仕事や業務、作業を実施するうえで「ただしい計画は存在する」「妥当性のある計画を立案することは容易だ」という思想が強い
(つまり、問題は計画段階ではなく実施段階で多く発生する、という思想)
4)製品(サービス)は設計品質よりも設計どおりに製品ができたか否かの検証が重視されている
5)「計画」「実施」「検証」それぞれの段階の責任や権限に独立性を持たせる管理方式
6)担当業務範囲の明確な区分化
7)提供する明確な製品(サービス)イメージが確立していない段階やひらめきが重視される業種(俗に言うクリエイティブな色彩が濃い仕事)では効果を発揮しにくい

これらは、すでに述べたように「仕事を管理する上での文化的な背景」が規格原案を作成する段階で意図したか否かは別にして、自然と思想のなかに溶け込んだと考えるのではないかと思う。
たとえば「計画・管理する人は能力が高い」「実施段階の人は能力が低く計画された事をやればいい」という文化的背景で育った人には現状の規格の特徴でもある「適切な製品設計や製品実現計画の立案は容易に存在する」や「検証重視」の思想はフィットするだろうし、「少数精鋭組織として管理の単位や業務範囲の明確な区分なしに業務を効果的に実施してきた組織」にとっては、規格がイメージしている「担当業務区分の明確化」はちょっと徹底しすぎかもしれない。

「ISO思考」でものごとを思考することは、経営管理をする上で重要なことである。
しかし、そのツールとなるISOマネジメントシステム規格の特徴を理解して、組織文化や地域社会、業種・業態に見合った形式にカスタマイズしなければ、「ISO規格はまるで使えない」というような的外れな議論を増長させてしまうと思う。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ75号より)

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