あるISO認証を取得している会社の経営者の方が社内のミーティングでこんな事を言われていた。

『考えることは大事だ。しかし、自分だけで考えていてはダメだ。それは考えが独りよがりになるから。いくら、多面的にモノを見ようとしても人は“自分目線”になる。それを解消するのは人に相談し、人と話し合うことだ。相談された人は“相談された人のためになるかどうか”に加えて“やろうとしていることの対象者(顧客)にとって役立つものか(買いたくなるものか)”という客観的な視点でものごとをアドバイスしてくれる』

メモを取っていたわけではないので不正確な部分もあると思われるが、確かこのような趣旨の話をされていた。

傍でこの話を聞いていた私は「もしかしたら、これはこの経営者自身の自戒を籠めた話なのかもな」と思った。
「職人気質の技術者」といわれる人は「これ面白そうだ」「こんな機能が開発できそうだ」と直感的に感じると普段は「顧客重視だ!」といいながら「顧客のニーズや期待」を半ば度外視して「イケイケどんどん」に走る傾向がある。

このような考えで日常的に会社を指揮し、ISOを経営に活用しようとしているのであれば、社員も「顧客重視」「継続的改善」といった「ISO思考の概念」が着実に身に付いているに違いない。

しかし、審査を進めていくと、経営者も社員の多くも、思考がまるでISO思考化されていない。
最初は「こうだからこう、だからこうなる」という思考パターンがまだ日常化されていないだけかな?と思った。

しかし、発言の端々で「ISO認証を返上する企業が増えてISOの価値が下がっている」とかた「ISO9001は中小企業では使えないが、環境は利益を出すのに活用できる」とか「製品が多種多様で単価が安くデータを取る労力が掛かるから一切当社ではやらない」などが飛び出してきた。
確かに、この言葉の気持ちは分かる。
ある時期、「ISOがないと商売できない」「なんでもかんでも審査員の言うことに耳を傾けなければいけない」という強迫観念に駆られる風潮があった。
だから、今となると「当社に合わないことまで認証のためにやらされたくない」という意識が働くのだろう。
(もちろん、実際は、認証のためのみにやることなど殆どない)

ただ、少々理屈っぽくなるが、ISOのインタビューのやり取りの中では、
『普遍的な考え方を認識し、理解する』
『自社の現状を考慮して実行するかどうかの判断をする』
という違った次元を理解できないと受審組織と審査員間で「相互理解や相互浸透が図れない」シーンがどうしても出てくる。

昨今の多くの審査員は、こういうとき
・受審組織が、ISO自体を止めることになってはまずい
・このまま話を続けると受審組織に理解されず、トラブルになるから話を(丸く治め)打ち切ろう
・本質的な考え方をお聞きしようとしても素地がないから、結果として形式的なインタビューに留めておこう
・5~10年掛けて真綿で締めていくかのようにこちらでレベルを調節して徐々に指摘していこう
という発想になる。
つまり「今後に期待しよう」「今回の審査では蓋をしてしまおう」である。
しかし、残念ながらほぼ100%「何年経ってもこういった受審企業の状況は変わらない」のだ。

理由はいくつかあると思うが、根本的には受審組織に、
『構造に分け入る力がない』
ことが最大の原因だと思う。

ISOに限らず「マネジメント」には「構造」があり意味がある。
しかし、その構造や意味を考えず、気づかずに、ただ「形式的にやる」あるいは「自然成長的に自分がやってきた事を拠り所として行動する」だけでは「マネジメントの原則を活用して組織や自分を成長させることはできない」のだ。
マネジメントの構造をきちんと理解してその構造に分け入っていけば、自分も組織も変えていくことができる。
つまり、「構造に分け入る力」があれば、例えば「ISOマネジメントシステム」を活用して「気づき」を得て、自分や組織を変え、それを日常業務の中で「実践」することによって「質を変えていく事」ができる。

したがって、ISOを活用するためには、
「構造を分け入る力」(論理能力)
がなければ無理である。
つまり、基本的思想として組織が
・人は育てない、人は使い捨てという組織
・KKDD(経験、勘、度胸、ドンブリ勘定)の方が効率がいい
との認識で運営しているならば、対象の組織に「ISO思考」は身に付くわけがなく、ISOを活用する意味もなく、むしろ「ISOを採用しない自然成長的な経験や感性にしたがった運営方法を採用するほうがマシ」ということを、組織も審査員も理解して「ISO思考」や「ISO認証」の採否を判断し評価する行動を取る必要があるのだろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ72号より)

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