昨年、デパートで販売していたデザート菓子の賞味期限ラベルを付け替え、ギフト向け商品の産地を偽装していた高級料亭「船場吉兆」が、2008年5月2日の報道によると「本店の料亭部門で客が残した刺し身やアユの塩焼きなどの料理をいったん回収し、別の客に提供していた」という報道が流れた。

報道を聞いたときは、「やっぱり・・・」と思うと同時に「あれだけ昨年マスコミを騒がし、経営者は退陣し、改善計画書まで農水省に提出していたのだからたのだから、その時、他の膿もなぜ出し切れなかったのか」と思った。
そうでなければダメージが大きすぎて、完全な致命傷になってしまう。

その後の報道によれば、食べ残しの使いまわしは、
・前社長の湯木正徳氏の指示だった
・2007年11月の営業休止まで常態化していた
・船場吉兆本店以外の3店舗でも使いまわしは行なわれていた
・客が箸を付けなかった料理の一部はいったんトレーなどに移し変えて盛り付けなおした
・使いまわしは「アユの塩焼き」「八幡巻き」(ゴボウをうなぎで包んだもの)「えびきす」(エビに魚のすり身を塗って蒸したもの)「刺身」「天ぷら」など
・使いまわし料理は接待の宴席では主に接待側の客に出す
・わさびは客が箸を付けたものでも「わさび醤油」としてタレとして使用していた
などだったようで、ある意味「立派な手順」と化している。

ただ、法律的には、昨年の賞味期限ラベルや産地偽装は「食品衛生法」「不正競争防止法」など「法規制違反による責任」を問う事ができる。
しかし、厚生労働省によると「料理の使いまわし」は「品質が保たれていれば法律には抵触しない。あくまでもモラルの問題」になるのだそうだ。

確かにこの問題は、法律論ではなくモラルの問題であろう。
しかし、現在の湯木佐知子社長は「使いまわしという表現は改めて欲しい」と報道陣に要請していた。なんだかピントがずれている。
世間の船場吉兆に対する我々の怒りや呆れは「一見さんは利用しにくい、何万円もする料理なのに、料理の使い回しをするとは何たること」という点なのだ。

ただ、学生時代に格安の大衆食堂など飲食店でアルバイトしていた経験からすれば、サラダなどに添えられているパセリなど通常、箸を付けない食材は、多くの店で洗って使いまわしていた。
また、スーパーのお弁当具材は、惣菜コーナーの残り物で構成されていることもあり、ある意味、再利用・加工という名の「使いまわし」である。
賛否はともかく、こういったことは「あり得る話」「格安な大衆食堂や弁当だから」として顧客側もある程度「衛生面さえ確保されていれば」という前提で認識し了承しているかもしれない。

しかし、船場吉兆の場合は、老舗高級料亭なので、
1)揚げたて、作りたてなど一番美味しい状態で食事が提供されているのだろう
2)全く箸を付けない料理であっても、一度配膳した料理はすべて廃棄し、使いまわしなどするわけがない
3)出所がはっきりした所から高級食材を仕入れ、管理した状態で調理している
4)そういった一連の安心・信頼・コストを「高額価格と老舗ブランド」は負っているはずだ
という「顧客の潜在的要求」がある。
つまり、このような「顧客の潜在的要求」=「顧客や社会の要請」に適用していないから糾弾されるのだ。

使い回しをした理由として、船場吉兆の現経営陣は
・絶対的権限を持つ前社長の指示であった
・高級食材や丹精こめて調理した料理がもったいない
・廃棄物を減らしたい
というような理由(言い訳)をしていた。
しかし「それでは老舗高級料亭としての顧客の期待」には全く応えていないし、裏切りである。
また、確信犯(本心から悪いと思っていない)であるとするならば「顧客の要請や期待」を見誤っている。
そう考えていくと、船場吉兆の前社長の湯木正徳氏の使い回し指示は「ブランドへのおごり」「利益優先」「顧客軽視」としか言いようがなく、現社長の湯木佐知子氏の会見を見る限り世間の信頼を取り戻すことは難しいのだろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ71号より)

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