この年度の節目に2社が相次いで「苦情対応マネジメントシステムへの適合」を発表している。
発表した1社は、2008年3月26日付けで消費者問題に取り組む専門団体である「社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)」からの「意見書」を取得し、4月1日に自己適合宣言をした「株式会社損害保険ジャパンおよび損保ジャパンひまわり生命保険株式会社」。
もう1社は2008年3月31日付けで世界的なISOマネジメントシステム認証機関である
「ビューローベリタスジャパン株式会社」から「認証書」を取得した「太陽生命保険株式会社」である。
両社の公表した取り組みを分析すると、取り組みの目的として
・従業員に対する顧客重視の意識向上
・保険商品を含めた顧客サービスの向上
・苦情を申し出られた顧客が満足できる矛盾のない系統的な組織対応の仕組みの確立
・苦情対応の適切性を検証するとともに、苦情の傾向を明確にし、問題解決を行う仕組みの確立
・苦情対応マネジメントシステムの継続的改善及び苦情を業務品質の向上に活かす仕組みの確立
・業務改革のスピードを高める効果への期待
といったことを挙げている。
保険業界が苦情対応マネジメントシステムの態勢整理・強化に取り組んでいるのは、2005年2月に明治安田生命保険で発覚した不当な不払い問題から始まる、いわゆる「保険業界の不払い問題」に端を発しているのではないかと思う。
日本の場合、生命保険に関しては約93%の世帯が何らかの生命保険に加入しているといわれ世界有数の保険大国である。
しかし、
・営業職員は一般的に新規契約ノルマがきついため離職率が高い
・営業職員の営業スタイルはいわゆるGNP営業(義理・人情・プレゼント)中心
・契約者が自発的に加入するケースが少ないため一般的に保険知識が弱い
(例:保険の保障期間や支払い条件など)
などの特徴があり、これらも不払い問題を大きくした背景といわれている。
つまり、苦情などお客様の声を軽視するのではなく、氷山の一角として捉え真摯に向き合う組織体制の重要性が保険各社に認識され、苦情対応マネジメントシステムの態勢整理・強化に取り組んでいる企業が増加していると言えるだろう。
うがった見方かもしれないが従来型の「苦情対応強化」=『苦情対応スキル向上』と考えると「クレーマーに対して適切にいなす」「苦情申し出者の興奮状態を丁寧な口調で和らげる」という「苦情対応の本質的な改善ではない」においがして「小手先のテクニック強化への取り組み」と感じてしまう。
しかし、これらの取り組みは「ISO10002に基づくマネジメントシステムを構築・実践し、内部監査や外部審査を受審することで、従業員の論理的な思考と業務全般にわたるPDCAサイクルの定着」を図ることができるので、きちんと導入していくことにより組織の本質的な力量向上に繋がると思う。
生命保険や損害保険には国民の殆どが何らかの形で加入している。
つまり国民に極めて身近な製品である。
保険の外交員と契約者がISO談義に花を咲かせ、組織全体がISO思考で業務を遂行していくことは、想像しただけで社会的な影響が大きいと思う。
保険業界のISOマネジメントシステムへの「真っ当な取組み」が、国民の関心を高め、多くの企業で「導入はしているけど形骸化しているISO」の活性化の一翼を担うものになることを期待したい。
【よかったらクリックお願いします♪】↓

ブログランキングranQ
企業家ブログ→http://www.kigyoukablog.jp/ranki.cgi?id=35