ある会社の監査に行った日のこと。
当初監査を予定していた製造工程が生産調整で動いていないという。
現地での監査は通常、平常時の営業日(操業日)に計画される。
つまり、日常の業務のやり方や状況を企業に訪問して現地で確認するのが監査の目的だからだ。

もちろん、ある目的、たとえば、問題発生時や通報時の場合の特別監査であれば抜き打ち的に企業を訪問することもあるが(この合意は基本契約書で規定している事が多い)、通常は現地に訪問する2週間ほど前に監査予定を訪問企業に通知し、合意を得ておく。
だから、その企業の通常業務が平日の8時~18時であれば現地監査もその曜日と時間帯で計画される。
操業上、あるいは業務上の都合で夜間時間帯のみの業務があるとすれば、仕事量を勘案して登録時の審査、または定期審査でその業務を確認することになっている。

要は「監査のために作られた状態」を監査しても実態は見えてこないので、「できるだけ実態に近い状態を確認する」、しかも「通常業務に大幅な支障が生じないように」というのが現地監査を実施する際の基本的な考え方だ。

まぁ、そうは言っても「監査が今日は入る」と企業内に周知がされていると、多くの企業で業務スペース(事務所や工場内部)に監査員が入るとなんとなく従業員が「かしこまって業務をしている」雰囲気が伝わってくる。
ちょっと質問しようかな?と思って作業場に近づいていくと、パッとどこかに従業員が消えてしまうこともある。
だから、各監査員は実態を知るために、「ピリピリしない和やかな雰囲気作り」などいろいろと現地で工夫を凝らしている。

ある監査員の方は、銀行に監査に行ったときにATMの前で客を装って振込の仕方がわからずにまごまごしている状態を作って、銀行の案内係の人の対応手順を確認したそうだ。
このときは、企業側の監査担当の事務局には直前に「このようなシチュエーションで監査をしますよ」と断ったそうではあるが、対応した案内係の人は知らされていないから、まさに生の業務を監査員は確認できたわけである。

話を冒頭に戻すと、監査に行った日は『監査予定の製造工程が動いていない』という状態だった。
マネジメントシステム監査の場合は、手順の確認なので他の製造ラインを確認するということでもいいのではあるが、監査のスケジュール的に予定を変更するのは無理であった。
その時の監査が定期審査であったこともあり、「モノは作っていなくても現場を見に行きましょう」といってとりあえず、現場に行った。
すると、設備のメンテナンスや次回製造のための治具の段取り換えをやっていた。
これらの業務は平常の操業時間帯ではあまり見る事ができない業務である。
また、あるラインを眺めていたら、床に微量の水がちょろちょろ流れている。
たどっていくと、あるバルブから水が漏れていた。
案内係の人と確認すると、バルブのパッキンが劣化している(要はメンテナンス上の不備)ようだった。
たぶん、製造ラインが動いている時であれば、「微量の漏水」には気がつかなかっただろう。

そのときは、たまたま「監査予定した製造ラインが業務上の都合で動いていない」という偶発的なケースであった。
しかし、そのような状態の時の監査を経験して平常操業ではなかなか確認できないことも見えた。
それは監査員だけでなく、企業側としても「気づき」があったはずである。
たまには「平常操業以外の業務」も意識的に計画して見に行く必要があるんだなぁ、と体感した次第である。

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