「金融商品取引法に基づく株式の大量保有報告書の虚偽報告疑惑」が話題になっている。
金融商品取引法では、上場企業の5%を超える株式を取得した株主に対して財務局に株式の保有報告を提出することが義務付けられている。
報告された内容については、金融庁が管理する「EDINETA(エディネット)」公表される。ちなみに「EDINET」とは『金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム』の英語名である「Electronic Disclosure for Investors' NETwork」の頭文字である。

関東財務局に提出された虚偽疑惑のある大量保有報告書は1月25日の午後4時10分頃にネットを通じて「テラメント株式会社」(川崎市麻生区)から提出された。
その報告によると、大量保有している株式は、アステラス製薬㈱、ソニー㈱、三菱重工業㈱、トヨタ自動車㈱、㈱フジテレビジョン、日本電信電話㈱と誰もが知っている大企業ばかりで、産業分野も多岐に渡っている。
これだけの企業を買収(51%以上)したとすると、株式を保有は約20兆円という異例の取引額になるので通常は考える事が出来ない。

この報道を耳にして「EDINET」https://info.edinet.go.jp/EdiHtml/main.htm
を早速チェックしてみた。
するとトップページには、「金融庁としては、現在、急ぎ事実関係を調査中であり、仮に虚偽記載と認められれば、訂正命令を含め厳正に対処します」との案内が掲示されていた。
この報告がされたのが金曜の夕方で市場が閉まる直前だから、株価への影響は殆どなかったわけではあるが、時間帯によっては大きな影響を与えるわけであり、金融庁の案内は「そりゃ当然だろう」と思う。
しかし、仮に事実だったら(ありえないと思うが)明日の株式市場は混乱するだろう。

それにしても、金融商品取引法では、虚偽記載は5年以下の懲役や500万円以下の罰金に問われるそうであるが、驚くことに「EDINETに掲載される前に内容を審査する仕組みがない」というのだ。
「ありゃ~、組織に対する最低限度の要求事項が規定されている品質マネジメントシステム規格のISO9001でも“文書は発行前に承認しなさい”と規定されているの、金融庁の文書管理の仕組みにこんな盲点があったとはなぁ」とびっくり。

金融庁からすれば「行政サービスの一環で電子開示システムを作ったんであって、そもそも法規では“大量報告した株主は報告しなさい”と報告することしか規定されていない。つまり内容の真偽のほどをチェックする発想は法規にはない」といいたいかもしれない。
確かに、現状の金融商品取引法は「報告の義務」しか規定していないのだろう。
しかし、世間は「株式市場の流動性を活発で円滑にし、情報をタイムリーに容易に入手できるためにEDINETがあるんだから中身の真偽もある程度は金融庁によってチェックされているよね」と思っているし、少なくとも期待しているはずだ。
と考えると、この問題の原因は、
1)EDINETサービスに対する世間のニーズや期待を理解せずに導入している
2)金融商品取引法の思想(報告義務のみ)とEDINETの特質(公表情報の信憑性)に不整合があるにもかかわらずそのまま導入している
(つまり、内容の審査という思想がないまま導入)
ということだろう。

とりあえずの対策としては、
「EDINETに“掲載情報については大量保有者の報告に基づきそのまま掲載しています”との案内を入れる」程度しかないだろう。
ちゃんと報告内容の審査をするとしたら、時間が掛かりすぎるわけで、市場に対するタイムリーな情報提供というEDINETの特長が失われることになる。
金融庁がどのような再発防止策を講じてくるか、注目してみたいと思う。

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