作家の小檜山博さんがJR北海道の車内誌(毎月8万部発行)に連載している短編小説の内容が盗用されているとの指摘があり、1月18日に謝罪会見をされた。
ちなみに、小檜山さんとは北海道新聞社在勤中に執筆活動を始め、76年に「出刃」で芥川賞候補となり、83年に「光る女」で泉鏡花文学賞を受賞している今年71歳になる作家さんだ。
盗用していたのは車内誌「THE JR Hokkaido」の2008年1月号で「新・人生劇場」という読み切り短編小説の「電車で」という作品で、毎日新聞の読者投稿欄「女の気持ち」の2007年10月に掲載された「めんどくせ~」と酷似しているという。

盗用しているとされた短編小説の概要は「主人公が女子中学生に席を譲られた体験を娘に話したところ、娘が感激して泣いた」というエピソードでこのエピソードは読者投稿とそっくりで、文中の表現も例えば、
投稿:「席を詰めてくれてありがとう。おかげで助かりましたヨ。本当にありがとう」
短編小説:「席をあけてくれてありがとう。お陰で助かりました。本当にありがとう」
と酷似している。

会見した小檜山さんによれば「小説にはヒントやモデルがある。僕自身としては、未熟で飛びついたところもあり(投稿を写した)メモを見て構成してしまい、言葉を咀嚼(そしゃく)できなかった」と釈明されていたが、正直なコメントだと私は思う。
私は個人的には、人間心理を描写した「感動もの」「人情もの」を書く小檜山作品が好きで、
特にJR北海道の車内誌の作品には注目していた。
生家が炭焼き小屋で貧しかったという経歴より、いろいろな辛酸を社会で経験され、それをモデルやモチーフとして書いているのだろうなぁ、と思っていたが、「エピソード」の大元となるヒントはやはり別のところにあったのだ。
ただ、実際自らの体験のみでそんなにも多くのエピソードがあるわけもなく、題材は他のところから持ってくること自体は普通である。

似たような話として思い出されるのは、辛口漫談家の綾小路きみまろさん。
2~3年前だったと思うが第一生命保険のサラリーマン川柳と酷似するエピソードがあったことで、今回の小檜山さんと同じような謝罪会見をされている。
今回「盗用」と指摘されたきっかけは岩手県内の毎日新聞読者からの指摘だったそうだ。
問題となった原因は小檜山さん自身も言われていたように「自分の言葉として咀嚼できなかったこと」に尽きると思う。
小檜山さんはパソコンで文章を書くタイプではなく、原稿用紙に万年筆でマス目を1文字ずつ埋めていく昔ながらのスタイルで作品を生み出している。
つまり、メモについて、すでに「ヒントとなる題材の文章を咀嚼しながらメモした」と勘違いしてそのまま原稿に使ってしまったのではないかと私は想像する。

この騒動で、JR北海道の車内誌1月号は回収されているという。
この連載されている短編小説はいつも小檜山さんの独特の文体の雰囲気のせいもあり「なるほど」と心に響く内容が多い。
今後の連載が休載にならないことを祈りたい。

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