2008年1月16日の読売新聞の記事で「高圧ガス法罰則に矛盾」という記事が出ていた。
高圧ガス保安法とはその名の通り高圧ガスによる災害を防止するため、高圧ガスの製造、貯蔵、販売、輸入、移動、消費、廃棄等を規制する法律である。
法律自体は1951年 6月7日に当時は高圧ガス取締法として制定され1996年に高圧ガス保安法と改称された。

「罰則の矛盾」は“届け出業者よりも無届け業者に関する罰則が軽い”というものだ。
具体的には、高圧ガスを販売する場合、各都道府県知事に販売業者として届出し、販売業者は高圧ガス販売主任者資格を有するものを置かなければならない。
しかし、無届け業者の場合の罰則が30万以下の罰金であるのに対し、届け出業者が高圧ガス販売主任者資格を置かなかった場合の罰則は禁固刑または60万以下の罰金となる。

警視庁生活環境課は、2006年5月~2007年4月に掛けて都内の建設会社など4社に酸素ガス499本、アセチレンガス890.5キロを約425万円で販売した販売会社を無届け販売の疑いによる高圧ガス保安法違反で摘発した。
この業者は1981年に設立されているが、設立当時から無許可無届けだった。
警視庁としては摘発する際に「高圧ガス販売主任資格者が設置されていない」ことで摘発しようとしたが、無届けなので資格者を設置していないことによる摘発はできず、法律をチェックしていたら無届け業者に対する法律違反の罰則の方が軽い事が判明したという。

警視庁はこの「罰則の矛盾」を、高圧ガス保安法を所管する経済産業省に指摘した。
経済産業省はこの指摘を受けて「無届け業者の摘発は法律施行以来例がなく、無届け業者が高圧ガスを販売することを法律上はあまり想定していなかった」とコメントしたという。

この記事を読んで、
・今までに無届け業者が販売している(いた)ケースは他にもあるのではないか
・警察は販売業者が無届け販売である事実を知っても従来は摘発せずに注意で済ませてきたこともあるのではないか
・法律の見直し(レビュー)の手順はどうなっているのか
ということを感じた。

あくまでも予想であるが、この販売会社は、都内の建設会社に酸素ガス等を販売していたわけだから、建設会社が販売業者の「無届け販売」(法律違反)に気づいたのではないだろうか?
建設会社の多くは「環境マネジメントシステム(ISO14001やエコアクション21等)」を導入しており、それらの規格では「関連法規制等に対する順守評価」の仕組みが求められている。
法規制等の順法性を確認する仕組みがあれば、販売業者の法律違反はすぐにわかるはずだ。また「経営の質(ISO9001に代表される品質マネジメントシステムなど)」に関する規格でも購買業者を評価する仕組みが求められているから、その仕組みがあり、機能していれば高圧ガスを購入する側の建設会社はその枠組みの中でも気づく事ができる。

また、法律を所管する経済産業省は罰則の矛盾を「あまり想定していないケース」と表明しているが、仮にそうだとしても「制定された法規制の見直しの必要性をレビューする的確な手順はない、あるいは機能していない」といえる。

話は若干それるが、私は仕事柄、企業内の規定類の構築、運用状況を内部監査する機会があるがその際、企業側に「もし・・・だったらどうされますか?」と通常は実施例や運用例が殆どないレアケースが発生した場合について質問する。
すると企業側はたいてい「今まで仕事をしてきた中ではそのようなことは発生していない」と回答される。
そこでもう一度「仮に発生したとしたらどういう手順になりますか?」と企業側は案外回答に戸惑うし、戸惑いながらも規定に対する認識が深まったり、規定改定の必要性に気がついたりする。

「高圧ガス法罰則の矛盾」の記事を見てつくづく、
・企業の法規制遵守の意識と認識および順守確認の仕組みの向上
・法規制制定後の明確なレビュー方法(法規制見直しの必要性評価)確立の必要性
について再認識した次第である。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカルシンキングのススメ メルマガ55号より)

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