今年に入ってから出版社の倒産のニュースが相次いだ。
1件は、自費出版大手の新風舎、もう1件は中堅出版社の草思社である。
2件の倒産に至るケースは異なる。

新風舎の場合は、
・過去に出版した著者から「出版した書籍が書店に並んでいない」「売れない」などの苦情が相次ぎ集団訴訟を起こされる
・苦情に伴う風評の悪化により売り上げが減少(07年8月期の売上高は前期比13%減)
といった事が原因のようである。

一方、草思社は、
・出版不況の中でこの数年間ヒット作がなく業績が悪化した
・各編集者の裁量に任せる方針であり、それが裏目に出た
・雑誌や新書、文庫がなく単行本のみである
といった事が原因のようである。

つまり、新風舎は、賞金付きの「新風舎出版賞」を創設し、一般の人から原稿を集めるビジネスモデルを確立してきた。
このモデルのメリットは、広告塔となる優秀な作品の出版権を獲得できる点、出版賞に応募してきた作者に「共同出版」という名の自費出版営業を行なうことができることである。
しかし、過剰に作者の期待感を煽る営業をすると「契約違反」として訴訟問題に発展する。これが経営を圧迫したのであろう。

また、草思社は「一冊入魂」とも言うべき職人気質の作品作りをしてきた。
しかし、昨今の活字離れによる出版不況により、雑誌や新書など手軽な出版物が売れる傾向になると単行本のみの草思社は大ヒット作に恵まれないとつらい。
最近の出版業界は、返品率40%とも言われ「売れないかメガヒットか」しかなく、10万部程度のヒット作品層がなくなってきているのだという。

ビジネスの継続を最優先で考えた場合、自分たちの成功してきたビジネスモデルの成功原因を明確に認識して、その部分を確実に管理していかなければ、自社や業界を取り巻く「脅威」や「自社の弱み」に対して脆弱である。
2社については、風評や業界動向に対する対応力が経営面だけで考えれば弱かったと思う。

ただ、出版業界という枠組みで考えると、要は、中堅出版社が生き残るためには、中身より安易に売れる中身の薄い手間の掛からない出版物の制作に力を入れて、出版点数を増やすということになる。ただ、この考えでは、良書は出にくくなり、逆に出版不況(負のスパイラル)は加速してしまう。
「勝ち組負け組み思想」や「売れたもん勝ち思想」で自社本位に走ると業界が自体のクビを徐々に締めていくことになっていくだろう。

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