「なぜISOマネジメントシステムを組織に導入するのですか?」と企業の経営者や管理者に尋ねると「製品やサービス、業務の質を継続的に改善して顧客満足度を向上させ、顧客に信頼され、組織を発展させるためです」というような優等生的な回答をされる方が多い。
真にそのような考えでマネジメントシステムの構築、運用、改善を実施される意向なのであれば大変立派な話である。

しかし、マネジメントシステムを導入し、認証も取得して数年すると急激にトーンダウンする会社が実はかなり多い。
この理由には色々あると思うが、一番大きな理由は、
『ISOを導入した割には業績が伸び悩み、逆に業務の煩雑さが生じている』という現状があるためであろう。

こういった企業の最大の間違いは、
1) まずは顧客のニーズや期待を理解して顧客満足度を向上させる
2)顧客満足度の向上により顧客に信頼され、選ばれ続ける企業になる
3)結果として業績が伸びる
というプロセスがISOの思想である事を理解していないことである。
つまり、『一発大逆転ホームラン』的なビジネスを目指す場合は、ISOのマネジメント思想としてそぐわない部分があるのは否めない。

ここでいう『一発大逆転ホームラン的ビジネス』とは、
・時代背景的背景など単なるブームに乗る
・大量の資本を投下してブームを作る
・勘に頼って一山(ひとやま)当てる
・顧客を半ば騙して(言い過ぎであれば信じ込ませて)利益を得る
・顧客満足を度外視して、従業員を上手く競わせて利益をむさぼる
など邪(ヨコシマ)な発想や思想を経営陣が持っているケースのビジネスである。
このようなビジネスは「業務プロセスの継続的改善」より前に「稼ぐだけ稼ぐ」の思想であるし、「ビジネスの成功」≠「業務プロセスの優位性」(要は、成功は単にラッキーなだけ)である。

それにしてもこういった一発逆転ホームラン的ビジネスを思考する経営陣ほど論理能力が極めて低い。
要は一見、頭の回転が速く、ものごとを系統立てて思考しているように見えるが、よくよく観察するとそうでもない。
論理的に「実施している方向性は間違っているはずがない」という確固たる信念があれば結果がすぐに出ずとも「もうちょっと頑張ってみよう」の発想が生まれる。
しかし、概してこの手の経営者は、経営判断が早い。
「経営判断が早い」というのは、「決断力がある」と同義語で捉える方がいるがそれは間違っていて、「データに基づく論理的な裏づけが弱いから結果が出ないとすぐに撤退」するのである。

ISOマネジメントシステムに基づく継続的改善とは、顧客のニーズや期待を常に追い求め、自らの業務プロセスを改善していく地道な活動である。
しかし、ビジネスシーンにおいて『一発逆転ホームラン』的状況(要はブームに乗った状態)が続いているときは、「地道な活動をしなくとも成果が出ている」からその重要性に気がつかないし、「論理的な裏づけをベースにしているISO面倒なものである」とうそぶく。

「一発逆転ホームラン的ビジネス」を志向するか「地道な継続的改善をベースにしたビジネス」を志向するかは経営陣やそこで働く社員の人生観にもよるのでどちらがいいとは一概にいえない。
ただ、そういったビジネス形態の特性を理解して、自社にとってISOが経営ツールとして向いており使えるか否かを考えることは重要なのである。

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