ISOを導入している俗に言う一流企業の人に「どう役立つのか説明してよ、不必要な文書や記録が増えるばかりなんだけど……」と質問されると苦笑するとともにがっかりしてしまう。

基本的な問題は「ISO規格の要求事項の意図や効用がきちんと教育されていない」ことに起因する。
全員とは言わないが一流企業に勤務する人であれば、それなりの論理能力や理解力があるはずだ。
つまりISO導入後にISOに上手く活用できず不満を抱えている組織であっても、理詰めでしっかり説明すれば、「なるほど、ISOって実はこれはこういう制度なんだ、役立っていないのはうちの会社の活用方法が悪いだけなんだ」と理解し、ISOを根っこから否定する人は少なくなる。
つまりもっと常日頃からわかりやすく丁寧にISOの効用を説明することが業界関係者に必要なのだと思う。

また、経営者はISO規格の根本思想である「顧客満足を向上させることで組織は成功する」という概念を理解し、既存の経営思想や評価尺度とのギャップを埋める必要がある。
例えばコンサルティングである自動車ディーラーを訪れて社長と話をした際に、ISO14001に取り組むというので、少し意地悪な質問をしてみた。
「営業部門の業務活動にも環境に考慮しなさいと言うことになりますが、お客さんがきて、『セカンドサイドカーとしてもう一台欲しい、予算は300万円』といったとします。『高級セダンがお勧めですが、セカンドサイドカーをで1人で運転するならリッターカーで十分でしょう。地球環境にも負荷は少ないですから』と営業マンがお客さんに車を売り込んだらその営業マンをどう評価しますか?」と聞いてみた。
その経営者は「う~ん、個人的にはその営業マンの姿勢を評価するけど、会社としては売り上げ目標が営業マンの評価尺度になっているからその営業姿勢を現状では評価する結果にはならないかもしれない」との答えだった。

こういう状況だとするならば、従業員はみんなどっちの方向を向くかということになる。つまり、環境が大切だとか、ISOはこういう目的でやっていると経営者が言っても、それはお題目にしか見えないわけで、すごく矛盾していることを言っている。環境に真に取組むなら顧客満足を意識して真剣に組織のことを考えて取組んだ社員を評価できなければおかしくなる。

しかし多くのISO導入組織の経営者はこのようなことにすら、自分の中で説明できていないのが、現状である。
こうなると従業員はISO導入に対して被害者意識しか持てなくなる。

ISOを導入し、経営に活かしたい組織の経営者は、プロセスを問わない単なる成果だけでなく、顧客満足向上を念頭においた業務活動をした人の成果を評価する仕組みが必要であることを認識し、理解しておくことが重要なのである。

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