(前編からの続き)
以上を整理するとISO認証制度には、
1)信頼性、厳格性を徹底追及した認証審査サービス
2)受審組織の不十分な領域と改善するための考え方を示唆してくれる認証審査サービス
といったニーズや期待がある。
しかし、現在の制度や認証機関の現状のパフォーマンスはそのような要求に十分応えていない。

1)の「信頼性、厳格性」をとことん追及する認証審査をするとしたら以下のことを(実現性は無視して)提言したい。
a)「ISOマネジメントシステム認証機関協会(仮称)」のような組織を設けて、受審査企業に対する条件を満たした審査員が無作為に選択されて審査チームを構成し審査をする仕組み
b)不祥事やコンプライアンス違反、重大な製品トラブルや苦情発生に伴う「臨時審査(特別審査)」について「ISOマネジメントシステム認証機関協会(仮称)」が一元管理し、臨時審査チームを構成して審査をする仕組み
a)、b)について説明を加えると、a)は認証機関と審査員の「利害」を極力排除する考えである。認証機関は受審企業から、審査員(特に契約審査員)は認証機関から対価をいただいている以上「継続して受審企業に選ばれるための行動」が働いてしまうのはある意味当然である。司法制度で例えれば裁判官が(概ね)信念に基づいて毅然とした判決を下せるのは経営的な面を考えなくていいからだ。かつて4大会計監査法人のひとつであった中央青山監査法人(現在は解散)が破綻したヤオハンジャパンや山一證券、不正経理が発覚したカネボウや日興コーディアル証券の監査を実施し、担当した公認会計士が「適正な監査をしていたのか?」「監査に手加減はなかったのか?」と責任を問われた。想像の域ではあるが、監査収入が1社何千万円もするから担当公認会計士としては「監査法人の変更」を匂わされれば「会計監査の中で適正な監査証明が出せるような指南(ご指導)」をしてクライアントを繋ぎ止める行動に走りやすいだろう。
またb)は不祥事が発覚して審査を担当した認証機関自らが臨時監査を実施しても自らの今までの監査結果を否定する(事実があった場合)ことは難しいだろう。
2)の「受審組織の不十分な領域と改善するための考え方を示唆」してくれる認証審査をとことん追及するとしたら「マネジメント技術・監査技法・人柄」重視の方針で徹底した審査手順の改善とそういった力量を有した審査員の採用・教育訓練しかないだろう。現在の認証機関の多くは「JAB認定審査対策を含めて当該受審企業に適した業務経験を有した審査員をとりあえず登用する傾向」が強いがこの姿勢ではとてもこのような認証審査を望む受審企業の要望に対応できない。

別の角度で認証機関を眺めてみると業界内の認識は別にして受審企業や一般消費者にとって「ブランド価値」があまりない。ホテルに例えれば五つ星の高級ホテルがあれば、アットホームがウリの民宿や宿泊機能オンリーの低価格なビジネスホテルチェーンがあるように「認証機関の差別化・ブランド化」があまり進んでいない。
それは認証機関毎の情報開示の仕組みがないから「認証機関の差別化・ブランド化」が進んでいないともいえる。つまり、認証機関のデータ(例:認証企業の業種、企業規模、守秘情報に触れない範囲での審査で検出された不適合例、改善の余地の内容例、認証企業の不祥事発生率、審査の苦情発生率、認証機関移転率、所属審査員の経歴など)が気軽に閲覧でき、認証機関を比較検討できるシステムの整備が必要だろう。

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