第三者機関(認証機関)に要求されているISO17021規格で適合性だけでなく有効性の審査がうたわれている、という事情もあるが、ISO導入期間が長い企業の審査に対する期待やISO認証件数の減少も議論が活発化している理由だろう。
認証機関を認定しているJAB(財団法人日本適合性認定協会)では適合組織(JAB認定の認証機関でISO認証されている組織)の数を四半期ごとに発表している。
そのデータによるとISO14001はまだ減少に転じていないが、ISO9001は2007年から初めて減少に転じた。
具体的にISO9001の適合組織数は、
2006年7-9月 43400件
2006年10-12月 43564件
2007年1-3月 43369件
2007年4-6月 43067件
と推移してきている。
適合組織の減少理由には、「適合組織同士の合併」などマイナス要素ではない減少理由もあるが、
1)「錦の御旗」的な位置づけで取得していた
2)マネジメントシステムの本質を理解せずに形式的な記録作りに結果的には終始してしまった
3)第三者審査自体に付加価値を感じなくなった
4)組織の財政的な理由
といったマネジメントシステムまたはマネジメントシステム審査を有効に活かすことができなかったなどのマイナス理由の方が多いと思う。
そもそも「マネジメントシステム規格」や「マネジメントシステム認証制度」は企業経営に役立てる事ができるのか?という問題がある。
詳細は省くが、理屈で考えれば「役立てられないはずがない」のである。
ただ、以下のような状況下にある企業や業種・業態では役立てることは困難だろう。
具体的には、
a)経営者、管理者、一般従業員などが企業人としてモラルが低い
b)マネジメントシステム規格がモデルとしている企業のあるべき姿が自分たちに投影できない(自分たちの組織とマネジメントモデルの差異(要はシステムとして足りない部分、弱い部分)が把握できていない。これには規格が規定している意味が本質的に理解できない状態を含む。)
c)b)により結果として適切なマネジメントシステム設計ができていない
d)筋道を立てたものの見方や考え方がそもそも欠落していて、鍛えることをしていない
e)監督官庁の管理システムが比較的確立しており、ISOが結果としてダブルスタンダードになっている(両者が調和することは理屈の上では可能であるが現実にはそうなっていない)
f)成長スピードが著しい企業でマネジメントシステムの変化を管理しきれない
などがある。
「たまごが先かにわとりが先か」の問題と一緒であるが、「明日のご飯」を常に心配している企業にとって、従業員の教育や経営システムの整理・改善といった活動はどうしても後回しになってしまうのが現実である。
それではマネジメントシステムの活用が成功している組織はというと、
○もともと組織的な活動がある程度できている
○従業員の能力が高い
○システム構築の要員と時間が確保されている
○改善意欲が組織全体として高い
といった状態の企業である。
以前にこのような条件に近い企業を指導した事があるが、システム構築・見直しは計画通りで、認証審査も比較的早い段階で受ける事ができ、システムの改善提案も活発化し、ISOによってより効率的な組織になった。
以上のような状態が現実である。
つまり現状では、マネジメントシステムを導入して成功している企業は、条件が揃っている稀な一握りの組織といえる。
しかし、その「一握りの条件を満たしている企業」も第三者審査が有効的でなければ認証審査そのもの自体には価値を感じなくなる。
「マネジメントシステムにおける有効的な審査」について考えてみようと思う。
ISO9001用語の定義などから「プロセスの有効性」と「マネジメントシステムの有効性」を定義してみると、
○プロセスの有効性
⇒プロセスの結果がプロセスの目的を達成した程度
○マネジメントシステムの有効性
⇒方針、目的及びそれを達成する活動を計画し、実行し、その方針及び目的を達成した程度
となる。
したがって有効性の審査という観点からすると「プロセス及びマネジメントシステムの失敗の要因(リスク)を考慮する事」がポイントとなる。
すなわち、「プロセスの失敗」と「マネジメントシステムの失敗」とは、
○プロセスの失敗
⇒プロセスの結果がプロセスの目的を達成できていない状況
○マネジメントシステムの失敗
⇒方針、目的又は活動が設定若しくは実行できていない、又は目的が達成できていない状況
となる。
以降では、内部監査、教育訓練、購買管理、クレーム処理、不適合管理(是正処置)、マネジメントレビューなど主要なプロセスについて「有効性の審査」について考えてみたいと思う。
(つづき)
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