「エコアクション21」という環境省が主導する「企業の自主的な環境への取組を促進する」環境経営システム認証制度がある。
認証制度だから申請されてきた受審企業を審査する「審査人」がいる。
審査人は資格制度になっており、この資格更新に「所定の講習会を受講すること」という要件がある。
今年の指定講習会は滋賀県長浜市で開催されこれに出席した。

初日の講習会には環境社会学者で現在は滋賀県の8代目知事をされている嘉田由紀子氏の記念講演があった。
嘉田知事は「新幹線の新駅計画凍結」を掲げて2006年7月の選挙で当選した。
知事になられる前は、京都大学大学院農学研究科博士課程修了(農学博士。論文名は『琵琶湖の水問題をめぐる生活環境史的研究』)し、琵琶湖博物館研究顧問、京都精華大学人文学部教授を歴任されていた。
経歴からわかるように社会学的な側面から環境を研究されていたので、「自然科学系オンリー」の環境学者と違いバランス感覚がある環境論で面白かった。

070908嘉田知事講演

一部を紹介すると、
『“もったいない”とは?』
(1)金や物を節約する
(2)物事や人の本来の力が発揮され「ありがたい」と思う
(3)物事や人の本来の力が失われ「心惜しい」という気持ち

『“もったいない”は近江人の生活の魂が込められた生活哲学』
滋賀県民の皆さんが求めた3つの「もったいない」
○税金のムダ使いもったいない
(財政再建・公共事業の高コスト体質からの脱却、新幹線新駅への疑問
○自然のめぐみ壊したらもったいない
(琵琶湖総合開発後の自然再生、水質回復、生き物の力の再生)
○子どもや若者の自ら育つ力そこなったらもったいない
(近代化の中での人間の生きる力の再生、教育、育つ力の再生)

『環境問題を考えるときには・・・』
「科学的思考」(3人称)と「文化的思考」(1人称、2人称)という複眼の思考が必要
科学的思考⇒例えば水質を論じるときには「BOD」「COD」といった数値を用いる
文化的思考⇒データでは表せない価値(例:水辺や里山の価値、歴史性と文化性、心地よい風景、川や森と関わり続ける暮らし、近い水・近い木々への関心)

といった具合。
要は、環境を「私」「私たち」の問題として捉え、主体的に行動すること=1人称、2人称として取り組むこと⇒エコアクション21(事業者自らの主体的な環境配慮行動を促す仕組み)を通じて審査人は事業者の1人称、2人称の行動を促し、住民、行政と一体となって環境問題解決への大きなうねりの一翼を担って欲しい、と講演では述べられていた。

嘉田知事の話を聞いて、自然科学オンリー、または社会科学オンリー、経済学オンリー、行政畑オンリーの研究・経験をされてきた方にはこういったセンスでなかなかものごとを捉えられない。
環境問題は、物事を多面的に捉える力量が必要だとつくづく実感した。

余談であるが、嘉田知事は「高学歴」&「県職員」「大学教授」「知事」とバリバリのキャリアウーマンであるが、とっても気さくな方だった。
知事は笑顔が素敵な方だから知事より年上のオヤジ審査人にあっという間に囲まれていたのにニコニコしてそれに応じていた。
例えば「行政畑オンリー」の政治家ではなかなかこうはいかないよなぁ、と思う。

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