普通、ビジネスでは「製品やサービスを提供する組織」と「製品やサービスを買い、利用する顧客(お客様)」がいる。
飲食業で例えれば、「食事や雰囲気を提供するレストラン」=組織、「食事や雰囲気にお金を支払い利用する客」=顧客 という感じだ。
組織は顧客に信頼され、安心して継続的にサービスを利用してもらえるように顧客のニーズを常にキャッチして、それに応えるためにサービスの質を高める仕事のやり方に変えていく。
サービスを安定した能力で提供し、継続的に向上させていく努力を怠ればお客さんは離れ、組織は衰退していく。
ISO認証制度(ここではISO9001とする)の場合でこの関係を考えてみると、一義的には
「ISO認証サービスを提供する組織」=審査登録機関
「ISO認証サービスを買って、利用する客」=適合組織(受審企業)
となる。
しかし、実際に制度が目的としているのは、『適合組織の顧客が安心して、その適合組織が製造または提供する製品やサービスを買うことができるひとつの判断材料』としてこの制度が存在する。
つまり、「ISO認証」を利用する真の顧客は「適合組織の顧客」といえる。
しかし、ISO認証を利用する真の顧客は「1円のお金を払わずとも製品やサービスを購入するための判断材料となる情報(=ISO認証情報)」を手に入れる事ができる。
普通に考えれば「サービスを利用する組織や人がそのサービスの対価を支払わない」ということはない。だから冒頭の「ISO認証制度は不思議な制度」となるのだ。
一般的には「ISO認証を利用する真の顧客」のISO認証制度に対する要求や期待
は「審査内容の信頼性、厳格性」などだろう。
つまり「ISO認証」というサービスを提供する審査登録機関は真の顧客のことを考えれば「審査内容がより信頼性、厳格性を向上させるような経営努力」をすることになる。
しかし、どの審査登録機関を選び、選択した審査登録機関にお金を支払う組織は審査される組織である。
つまり「信頼性、厳格性オンリーの審査内容」では「お金を支払ってくれる顧客」から選択されない、という問題が生じるのだ。
また一方、昨今は「自分の組織のためにISO認証サービスを受ける(審査登録審査を受審する)」という現象も生じている。
つまり「審査登録を受ける組織の顧客(ISO認証制度の真の顧客)からはISO認証の要求も期待もニーズも全くないが、組織がISOを導入し、システムを継続的に活用して改善している証(あかし)としてISO認証審査を受ける」というケースである。
この場合は、理屈で考えれば「真の顧客」は限りなくゼロに近い。
したがって、このケースの場合、受審組織が審査登録機関に対して抱く期待は「組織が成長し続けるために当社に必要なこと、現状不十分なことを示唆して欲しい」ということになる。
以上から「審査登録機関にお金を支払う顧客(受審企業)の期待」は、
1)信頼性、厳格性のみを追及した審査
2)不十分な領域と改善するための考え方を示唆してくれる審査
があるとすれば、2)の要素の方が大きいと思う。
しかし、認定機関(審査登録機関に審査登録機関としてのお墨付きを与える機関)の目指している方向性は当然ではあるが「真の顧客(受審組織の顧客)のためのISO認証制度」(つまり、上記1))である。
整理すると、
(1)真の顧客がお金を支払わなくても必要な情報が入手できて利用できる
(2)ISO認証を利用したい「真の顧客」がいないISO受審企業の存在
この辺が、ISO認証制度における不思議な部分なのだ。
○審査登録機関の差別化、ブランド化
(例:審査内容の厳格性が高い審査登録機関、認証のハードルは低いが企業の自主性・自律性を重んじる審査登録機関、認証企業の不祥事発生率が低い機関など)
○ISO認証制度の目的(本質、狙い)をもっと世間にアピールする
(ISO認証を利用する真の顧客が極端に適合組織の数に対して少なければ、ISO認証制度自体がそもそもの目的から外れている)
が今後のISO認証制度を議論していくうえでのポイントになるのではないかと思う。
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