本ブログで何度も取り上げている6月19日に発生した渋谷松涛温泉シエスパのガス爆発の話であるが、施設建設の発注をしたユニマット不動産の担当者が「天然ガスの換気設備が整っていたのでガス検知器を設置しなかった」と警視庁の調べに対して供述していると言う。
つまり「温泉の汲み上げ設備に強力な換気扇が設置されている」「ガスセパレーターにより天然ガスは分離されている」⇒したがって、「ガス検知器の設置の必要はない」と考えていたようだ。
確かに技術面から考えれば、「換気扇が適切に機能していれば、天然ガスが室内に充満することなく、火花などにより引火し、爆発すること」はないだろう。また法規制面から考えても温泉法の規定では温泉施設建設後のガス検知器の設置やガス濃度の測定義務はない。
だから、技術面、法規制面だけで考えれば発注担当者の認識は「全くおかしい」とはいえない。むしろ、ユニマット不動産内でこの担当者は「法律の範囲内で経済的に建設費用を賄った」と評価されるかもしれない。

ただ、開業前の2005年4月に開いた住民説明会でユニマット不動産は「温泉汲み上げ設備のある別棟地下1階にガス検知器を設置することを明言」していた。
その点を考えるとユニマット不動産は「利害関係者に対して嘘をついた」ことになる。
嘘をついたのは、「費用が掛かるから住民との約束は無視しよう」だとすれば「営利主義オンリーの会社」「信用のならない会社」として少なくとも道義的に糾弾されて当然だろう。

仮に「担当者はそのような住民との約束は知らなかった」ということであれば、
○地域住民との約束(協定)が担当者に伝達される仕組みがない
あるいは
○地域住民との約束(協定)を設計・施工会社への発注段階または施設の完成検査時にチェックする仕組みがない
という事が考えられる。

この事故が残念なのは「ガス検知器を設置するチャンスは何度もあったのに結局、棚上げされた点」である。
ガス検知器の設置が認識されていたのは、時系列的には、
1)温泉掘削会社が調査段階で検知器の設置を進言
2)住民説明会でガス検知器の設置をユニマット不動産が明言
3)施設の保守点検委託会社から検知器の設置を文書でユニマット不動産に要請
の少なくとも3度はある。
しかし、施設の設計図書にはガス検知器の設置は盛り込まれなかった。
3)の段階で「検知器の設置」を議論し始めても「発注者」「設計・施工会社」「保守点検会社」の3社で「設置費用はどこが負担する?」という議論になってしまうのは想像がつく。だから「検知器の設置問題」は棚上げのまま開業に至ったのだろう。

「ユニマット不動産のコスト優先の姿勢」「安全に対する認識の欠如」が問題であることは間違いないが、この問題の解決を「倫理観」に依存しるだけでは無理もある。
私たちはこの事故を通じて「仕事の仕組みとして何が足りなかったのか?」を議論していく必要があるだろう。

【よかったらクリックお願いします♪】
ブログランキング・にほんブログ村へ
ブログランキングranQ
企業家ブログhttp://www.kigyoukablog.jp/ranki.cgi?id=35