(つづき)
「手順を運用した事例がない」と言うのも、マネジメントシステムに問題があったり有効に機能していない可能性があるかもしれない、と思って監査する視点が必要である。
「事例がない」系の代表的なものは、
○クレームが発生していない
○不良品が発生していない
○是正処置、予防処置事例が無い
○安全パトロールで指摘が検出されていない
○内部監査の指摘が誤字、脱字、不整合と言ったものに偏っている
などである。

「クレームの事例を見せてください」⇒「クレームが発生していません」⇒「わかりました」と言ったやり取りでは監査となっていない。
せめて、「わかりました」の前に「それではクレームが発生したときの手順を教えてください」と言う質問を挟まないとシステムが構築され、関係者に理解されているかの確認にならない。

それでは、「事例がない」系の回答を被監査側にされたときに監査側は何をチェックすればよいか?
「事例がない」系の状態は「事例が本当にない」のか「手順が想定して規定していることを担当者は理解していない」のか「手順に従った処理をするのが面倒なので事実を隠蔽しているか」のいずれかである。
つまり、それぞれの「仮説」を検証するインタビューをすればいいのである。

例えば、「不良品が発生していない」の場合、「不良品の定義をどのように考えているのか」をまず質問するべきであろう。
回答が不十分であれば、不良品と一般的に捉えるものをそのように捉えていないから「不良がない」ことになっているのかもしれない。
また、不良品の定義が明確な場合は、製造業であれば「投入資材量と生産量をチェックする」といった工夫も必要である。生産量に比較して必要以上に資材を投入していれば「不良が隠蔽されているのかも」とその投入資源量と生産量の差異がなぜ発生するのか、確認を行う必要がある。

その他の「事例がない」系も同様に、クレームであれば「お得意さまの売れ行きの変化」、安全パトロールであれば「現場の整理整頓」、是正処置であれば「不良品、クレーム、内部監査以外の是正処置の発生経路の確認」、内部監査の指摘が誤字などに偏っていれば「内部監査員へのインタビューで力量が適切かどうかをチェックする」など「問題がないから事例がないのか、システムが有効に機能していないから事例がないのか」をチェックする必要がある。

このように「事例がない」系についても「手順どおりに実施されているかどうか」のみを軸に監査していては、マネジメントシステムが脆弱な領域、改善の余地がある領域は見えてこないのである。
(つづく)

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